USPTO Squires長官: IPR請求の後にRPI(真の利害関係者)を訂正する場合でも当初のIPR請求日を維持可能とした2件のPTAB審決の先例指定を解除した。315(b)項のIPR請求期限に影響する。

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Summarized by Tatsuo YABE  2026-02-13


概要:
Squires長官:IPR請求の後にRPI真の利害関係者)を訂正する場合には当初のIPR請求日を維持できないとした審決を再確認した。この審決に反する2件のPTAB審決の先例の地位を否定した。IPR請求日が後になると、米国特許法315(b)項のIPR請求期限(訴訟提起後1年以内)を徒過する可能性があるので要注意!


■ USPTO長官Squires氏による決定:(2026-02-04)
https://www.uspto.gov/subscription-center/2026/uspto-de-designates-two-decisions-involving-real-party-interest

USPTOは、RPI(真の利害関係者)に関する2件のPTAB決定について、先例(precedential)指定を解除(de-designate)した。

[1] Proppant Express Invests., LLC v. Oren Techs., LLC

[2] Adello Biologics LLC v. Amgen Inc.

これら2件の審決は、RPIの取扱いに関して、2025年10月に先例指定されたCorning Optical(2015)と整合しないという理由で、先例としての地位が撤回された。 

■ 背景:RPI要件の「厳格化」への回帰
USPTO長官Squires 氏は、202510月にPTAB(審判部)の全Administrative Patent JudgeAPJ)宛にメモを出し、Corning Optical を先例として指定するとともに、IPR/PGRの請求前に、すべてRPI(真の利害関係者)を特定することを求める従来の運用に戻す方針を明確にした。この方針転換は、RPI要件が緩和されていたことにより、外国の国家支援を受けた主体がPTAB手続を利用・悪用する事例が生じていたことへの対応である。

この決定(2件のPTABの先例の地位を解除)の核心は、「RPI訂正=新たなIPR請求日」ということだ。 米国特許法315(b)項では訴訟が提起された場合のIPR請求期限を1年と規定している。 故にIPR請求日が新たに設定されると315条(b)項の期限を徒過する可能性がある。これは実務的に重要なポイントである。

■ なぜ §315(b) 致命的なのか?
たとえば、訴訟を提起され10か月後に被告(侵害者側)がIPRを請求し、後に(訴訟提起後1年を超えた時点)でRPIを訂正すると初期のIPR請求日を維持できないので315条(b)項違反となりIPR請求が自動的に却下される。仮にIPRが進行中であってもRPIの訂正すると、その時点が新たなIPR請求日となる。これはSharkNinja時代なら回避できたが、Corning復活後は致命的となりうるという点で、制度変更のインパクトが大きい。

■ SharkNinja決定との関係
2020年の SharkNinjaでは、IPR請求時点で厳密なRPI分析は必ずしも必要ではないという緩和措置で運用されていた。 Squires長官は20259月末に SharkNinja の先例指定を解除し、今回(2025年10月)、Corningを先例指定することで、RPI特定義務の厳格運用を正式に復活させた。

■ 各決定の法的スタンスの違い
Proppant / Adello (今回、先例の地位を否定)
IPR請求人は、RPIの補正・訂正を行っても、所定の条件を満たせば当初のIPR/PGR請求日を維持できると判断していた。

Corning Optical(今回再度、「先例指定」が強調された)
RPIの訂正が行われた場合、IPR請求には「新たな請求日」が与えられる。
すなわち、35 U.S.C. §312(a)(2) に基づき、請求時点での完全なRPI特定がIPR請求受理の前提条件とされた。

■ 政策的意義
Squires長官は、RPIの完全特定が困難なケースがあること自体は認めつつも、半導体、AIなどの先端技術分野において、外国の国家支援主体が裏で資金提供し、米国企業を標的にPTAB請求を行うという問題が顕在化したことを重く見ている。その結果、RPI要件の厳格化という利害関係者の「透明性重視」の方向へ明確に舵を切った、というのが今回の本質である。 なお、本年1月15日の審決(Yangtze Memory v. Micron Technology)においてIPR請求時に真の利害関係者全員を開示しない場合には進行中のIPRであっても却下するという判断とも整合する。


参考: 

■ SharkNinja Operating LLC v. iRobot Corp. (IPR: 2020-10-06)
2020年に先例指定されたが、2025年に先例指定解除de-designate
SharkNinja側のIPR請求書では、複数のSharkNinja関連会社が請求人として名を連ねていたが、その親会社であるJS Global Lifestyle CompanyRPIとして記載されていなかった。特許権者のiRobot Corp.は、JS Globalが資金やコントロールの面で関与しているため、RPIとして記載すべきだと主張し、35 U.S.C. § 312(a)(2)違反を理由に申立却下を求めた。

PTABの判断内容(2020年決定)
RPIの記載義務は重要だが、「すべてのRPIが完全に列挙されているか」をIPR請求受理の可否の前提条件とはしない。もし後に誤りが判明しても、悪意がない限り、手続中にRPIの訂正を認め得る、という柔軟な運用を示した。

■ Proppant Express Invests., LLC v. Oren Techs., LLC (IPR: 2019-02-13)
20262月、USPTOが本件決定の先例指定を解除de-designation
手続の途中で IPR請求人側のRPIの記載に問題が指摘され、RPI の追加・訂正が許されるか、またそれによって IPR 請求日を維持できるかが主要争点の一つとなった。 悪意の有無などの条件をクリアする場合には、RPI を後から追加しても元のIPR請求日を維持できると判断された。

■ Adello Biologics LLC v. Amgen Inc. (PGR: 2019-02-14)
20262月、USPTOが本件決定の先例指定を解除de-designation
PGR請求後、請求人側(Adello Biologicsら)は、Amneal Pharmaceuticals LLC が本件のRPIとして記載漏れになっていたことを認識し、Mandatory Notices(必須通知)を訂正してRPIを追加させてほしいとPTABに申し立てた。上記Proppant審決と同様で、RPI記載漏れがあっても一定条件のもとで「元の請求日を維持して訂正可能」とするPTAB実務の指針の一つになった。

■ Corning Optical Communications RF, LLC v. PPC Broadband Inc.
IPR2014_00440_Paper_68.pdf 2025年10月に先例指定
特許権者 PPCは、IPR請求人 Corning Opticalが、親会社 Corning Incorporated と姉妹会社 Corning Optical Communications LLC RPI として開示していないと主張し、3件のIPRの却下を求めた。PTAB は追加証拠開示と審理を経て、親会社・姉妹会社が手続資金の拠出、弁護士の選任・指揮、紛争戦略への関与などを通じて実質的に手続を支配し得る立場にあったと認定し、これらをRPIと判断した。35 U.S.C. § 312(a)(2) の「petition may be considered only if … the petition identifies all real parties in interest」という文言を厳格に読み、RPI記載の不備は制度上の要件欠缺であり、IPRは継続できないとしてIPR受理を取り消し、手続を終了した。

このように、Corning Optical は、AIA後のPTAB手続におけるRPI開示と請求日効果を規律する中心的な先例として位置づけられ今回Squires長官によって再度先例の地位が強調された。

■ Yangtze Memory v. Micron Technology (IPR: 2026-01-15)
米国特許法312(a)(2)によるとIPR請求時に真の利害関係人(Real Party in Interest : RPI)全て知らせなければならないと規定されている。この条文の規定はIPR請求後に訂正(漏れがある場合には追加)などが許されるなど特許庁でも何度か緩和策が講じられた。しかし、今回のSquires長官による決定(Director Review)によって、IPR請求時に真の利害関係者(RPI)を全員記載しない場合には審理が進行中であっても不記載が見つかると手続きは中止となると判断した。

■ 35 U.S.C. §312(a)(2)
(a) Requirements of Petition: A petition filed under section 311 may be considered only if—
(1) the petition is accompanied by payment of the fee established by the Director under section 311
(2) the petition identifies all real parties in interest;

■ 35 U.S.C. §315(b)
(b) Patent Owner’s Action.
An inter partes review may not be instituted if the petition requesting the proceeding is filed more than 1 year after the date on which the petitioner, real party in interest, or privy of the petitioner is served with a complaint alleging infringement of the patent. The time limitation set forth in the preceding sentence shall not apply to a request for joinder under subsection (c).

全くの余談:

IPRの逆はRPI