Post-Therasense Inequitable Conduct Case

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Apotex Inc. v. UCB, Inc.

 Fed. Cir. Decision

2014/08/15

 Fed. Cir. Opinion

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Therasense判決後の「不公正行為」関連事件のまとめ:

Powel v. Home Depot (Nov. 2011)

Aventis Pharma v. Hospira (Apr. 2012)

1st Media v. Electronic Arts, SONY Ent America..(Sep. 2012)

Parker Vision v. Qualcomm (M.D. Fla, Jan. 2013)

Intellect v. HTC (Oct. 2013)

Ohio Willow Wood v. Alps South (Nov. 2013) 

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本事件はPost-Therasenseの不公正行為を認めた数少ないCAFC判決のひとつである。 2011年のCAFC大法廷によるTherasense判決によって不公正行為の認定基準が上がったもののその後数件のCAFC判決(Aventis v. Hospira 2012-04; Intellect v. HTC 2013-10;)で不公正行為の認定がされ、権利行使不能の判決が下された。 本事件は不公正行為の認定がされた事件の中でも最たるもので、Apotex社の創立者であって問題となった6,767,556特許の唯一の発明者(出願人)であるSherman博士の出願明細書の記載、出願審査中にとった一連の行為は甚だ悪質であったとしか言いようがない(勿論、地裁の事実認定をすべて正しいと推定すると)。 132条の宣言書(専門家の証言)で重要事項に関して虚偽をするということは不公正行為を挙証するための重要性の要件(BUT-FOR-Material)の例外としての「甚だしく悪質な行為」に該当するというTherasense事件の法理は後のIntellect v. HTCで確認された。 本事件においては「甚だしく悪質な行為」に該当する行為も実行された(CAFCではBUT-FORMaterialの要件を満たすとして「甚だしく悪質な行為」を詳細には検討しなかった)。 Sherman博士は先行技術の開示内容を審査官に誤認させるべく執拗に虚偽陳述を繰り返し挙句の果てには専門家の証言も活用し審査官を説得した。 さらに、Sherman博士は実施していない実験結果を明細書に記載していたという。 Sherman博士は過去に100以上の米国出願の経験があるようだが、今回の事件が現在出願係属中の関連出願にも影響を及ぼすことは避けられないだろう。

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Sherman博士の行為の悪質さ(地裁の認定した事実)からは我々は多くを学ぶことはできない。 しかしながら、今回のCAFCの意見で、主義主張を積極的に訴える(Advocacy)と虚偽の陳述との境はどこかについて触れている。 即ち、先行技術文献の開示内容に関して疑念があったとしても、出願人に好適な解釈が論理的に可能であればそれを誠実に、積極的に主張することは否定されない、但し、出願人が周知の上で重大な事実を曲げて自己に有利に主張するという行為は許されないと述べている。

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… He knew enough to recognize that he was crossing the line from legitimate advocacy to genuine misrepresentation of material facts. …(Paragraph before CONCLUSION on Page 16 of Opinion: Apotex Inc. v. UCB, Inc.)

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Reyna (Wallach, Hughes)判事による意見(2014815日)の概要:

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特許権者: Apotex Inc. (Delaware Corporation)

問題となった特許:米国特許第6,767,556

556特許はモエクシプリルの錠剤(タブレット)の製造方法に関する。 モエクシプリルはアンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害剤)であり、高血圧の治療薬として使用される。他のACE阻害剤と同様にモエクシプリル及び酸性塩が追加されたもの(モエクシプリル塩酸塩)は劣化及び安定性に対し脆弱である。 当該問題を解決するために556特許においては、モエクシプリル(またはモエクシプリル塩酸塩)をアルカリ性マグネシウム化合物で反応させたモエクシプリル・マグネシウムを主成分とするモエクシプリル錠剤を製造することを特徴とする。

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556特許クレームの概要:

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556特許のクレーム1

 

1. A process of making a solid pharmaceutical composition comprising moexipril magnesium, said process comprising the step of reacting moexipril or an acid addition salt thereof with an alkaline magnesium compound in a controlled manner in the presence of a sufficient amount of solvent for a predetermined amount of time so as to convert greater than 80% of the moexipril or moexipril acid addition salt to moexipril magnesium.

モエクシプリル・マグネシウムを含む固形状の医薬組成物の製造方法であって、以下のステップを含むことを特徴とする:

十分な溶液中で所定時間、モエクシプリル、或いは、酸化塩が追加されたモエクシプリルとアルカリ性マグネシウム化合物とを化学反応させ、対モエクシプリルマグネシウムのモエクシプリル又はモエクシプリル酸化塩の比が80%を超えるように変換するステップ。

 

(要はモエクシプリル・マグネシウムの含有率が80%以上になるように化学反応させるステップ)

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背景及び判決文の概要:

556特許は200045日のカナダ出願から優先権を主張し米国出願され2004727日に権利化されたものである。Sherman博士はApotexの創立者であると同時に556特許に対する唯一の発明者であって556特許の明細書を自身で作成した。 Sherman博士は過去に100件近い明細書を作成しているとともにApotex社の訴訟の全体を統括している。 2012420日、ApotexUCB社のUnivasc(錠剤)及びUniretic(錠剤)の製造と販売行為は556特許を侵害しているとしUCBを相手にフロリダ州南部地区連邦地裁に侵害訴訟を提起した。

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地裁での判断:

地裁はSherman博士(556特許の発明者であって出願人)の出願審査中のPTOに対し重要な情報を開示せず、さらに、重要な情報を誤報し、且つ、それらの非開示及び誤報の行為はTherasense判決で言うところの甚だしく悪質な行為であり、それら行為はPTOを欺く意図を持って行ったと判断し、556特許は権利行使不能であると結論づけた。

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●重要性の要件に関して:

Sherman博士は侵害の対象物であるUCB社の製造物Univasc及びUniretic556特許の先行技術に相当するのを知っていた。 特にUnivasc556特許出願時のクレームのプロセスで製造されたことを周知していたがPTOに開示せず、寧ろ、Univascのモエクシプリル・塩酸塩はアルカリ性マグネシウム化合物との化学反応によって生成されたものではなく、単に、組み合わされたものであると主張した。 しかしSherman博士はUnivasc錠剤が化学反応によって製造されたことを周知していたことが証拠によって理解された。 Sherman博士は556特許の出願日と同日にUnivasc錠剤とApotex社(自社)の製品でアルカリ性の安定剤を除いたものとで比較実験を実施し、Apotex社(自社)の製品(アルカリ性の安定剤を除いたもの)が安定性がないことを手書きで記録している。即ち、Univasc錠剤がモエクシプリル・マグネシウムを含んでいることを示唆していると理解される。 その実験の約1か月後にApotexの科学者らによってUnivasc錠剤の分光解析をしたところUnivasc錠剤のモエクシプリルの主成分はモエクシプリル・マグネシウムをであることが確認された。

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US4743450(1998年に特許されたWarner-Lambert特許:Univasc錠剤及びUniretic錠剤は450特許に基づき製造された)はACE阻害剤をアルカリ性・マグネシウム化合物を使用して安定化させることを開示している。 しかしSherman博士(その代理人)はUS450特許に開示されているモエクシプリル錠剤はアルカリ性・マグネシウム化合物と結合された(組み合わされた)ものではあるが化学反応はしていないと主張した。

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上記主張の信憑性を高めるためという目的のみでSherman博士はLipp博士に宣言書を書かせた。Univasc錠剤に関する事実およびSherman博士の当該状態に関する知識等は一切Lipp博士に知らされていなかった。その上でLipp博士の宣言書を専門家による宣言書としてPTOに提出した。

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さらに、556特許の明細書で幾つかの実験がなされたと記載されているが、実際には実験は行っていなかったことをSherman博士が法廷にて自供した。

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さらに、Sherman博士は556特許出願と関連する米国特許出願10/060191の発明者である。 同出願審査においてPCT99/62560が引用された。 PCT560は酸化マグネシウムを使用するACE阻害剤を開示しており、556特許出願に密接に関連するものであると理解されるが、556特許出願審査中にPCT560IDSされなかった。

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地裁は上記事実に鑑みTherasense判決の「BUT-FOR-Material要件(もし上記いずれかの情報が正しくPTOに提示されていれば556特許は権利化されていなかったであろう)」を検討する必要もなく、Sherman博士の上記行為は「BUT-FOR-Material要件」の例外である「甚だしく悪質な行為」と理解されると判断した。 地裁はさらにSherman博士は、米国特許出願システムを悪用し、出願時に既に広く流通している競合他社の既存の製品を訴えるべく、執拗に虚偽を続けたと理解されるとした。

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PTOを騙す意図の要件:

上記事実より最も合理的に導かれる唯一の推論はSherman博士のPTOを騙す意図であると判断した。地裁はSherman博士の出願審査中の行為の全体と法廷における証言の信ぴょう性の乏しさを基に判断したと述べている。 

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上記により地裁はSherman博士の行為はTherasense判決の法理に基づく不公正行為に該当し、556特許は権利行使不能であると結論づけた。

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CAFCの判断:

地裁判決を支持する。

地裁の、重要性の要件とPTOを騙す意図の要件に対する判断に明白な間違いは見いだせない。さらに、最終的な結論(Sherman博士はPTOに対する誠実・公正義務を欠いた)に地裁裁量権の濫用は認められない。

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●重要性:

Sherman博士は重大な不正行為を実施したことが明白かつ説得性のある証拠で挙証されている。

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(1)地裁で認定されたSherman博士の重大な不正行為の事実(Sherman博士は自身で明細書を作成しており、出願審査にも積極的に関与しており、556特許の明細書において自身の知りうる先行技術の重要な部分を開示しなかった;出願代理人および専門家証人であるLipp博士に虚偽の証言をするべく仕向けた;審査中に先行技術文献にはアルカリマグネシウム化合物との「化学反応」に関して開示していないという主張を続けた)を否定する理由はない。

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(2)Sherman博士はPTOに対して積極的に重大な事実を誤報した。

Apotexは侵害対象物、Univascのモエクシプリルがモエクシプリル・マグネシウム化合物を主成文とすることを実験で確認しながらも(556特許出願審査の第1回目のOAが出る前)、450特許の製法(Univasc錠剤の製造方法)ではモエクシプリル・マグネシウム化合物を生成する化学反応が存在しないということをPTOに繰り返し主張した。 Apotex556特許が権利化されて何年もしてから、侵害を訴えるためにUnivasc錠剤が80%以上のモエクシプリル・マグネシウム化合物を含むことを主張した。

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(3)Sherman博士のPTOに対する出願中の一連の行為(隠匿・誤報)は556特許の権利化に対してBUT-FOR-Materialである。

審査官が最終的に556特許を許可した理由は先行技術のモエクシプリルが安定性を保っているのはモエクシプリル・マグネシウム化合物に変換されたからではなくアルカリ性の安定剤が結合するもモエクシプリルと化学反応せずに最終製品まで残存していると理解したからである。Sherman博士の一連の行為(隠匿・誤報)がなければPTO556特許を許可していなかったであろう。 Apotexが主張するようにSherman博士は自身の先行技術に対する疑念・意見を開示する義務は負わない。 先行技術文献の開示に対する合理的な解釈を誠実に主張することは問題ではない。 問題となるのは、引例の開示内容に対する自身の意見或いは他の解釈を開示するのを失念したという状態を超えて積極的に且つ周知の上で引例の開示内容に対する重要な事実に関して虚偽をすることである。[To be clear, we agree with Apotex that Dr. Sherman had no duty to disclose his own suspicions or beliefs regarding the prior art.  There is nothing wrong with advocating, in good faith, a reasonable interpretation of the teachings of the prior art.  The misconduct at issue, however, goes beyond failing to disclose a personal belief or alternative interpretation of the prior art; here, Dr. Sherman affirmatively and knowingly misrepresented material facts regarding the prior art. (Paragraph bridging from Page 14 to age 15 of Opinion)]

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上記のようにSherman博士の引例に対する主張は「BUT-FOR-Material」に相当する虚偽であるという地裁判断を支持する。 依って、Sherman博士の行為が「甚だしく悪質な行為」であったか否かの判断をする必要なない。 但し、Sherman博士のPCT560IDSしなかったという事実、又は、556特許明細書中に実施していない実験結果を記載しているという事実はTherasense判決の法理で言うところの「BUT-FOR-Material」を証明することなく不公正行為を認定できるレベルの積極的な行為であることに違いはない。 特に、特許を取るためSherman博士が専門家の証言を使ってPTOに虚偽陳述した行為は甚だしい行為であって、許されざる行為である。

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●意図:

Sherman博士のPTOを騙す意図の存在は明白かつ説得性のある証拠で挙証されている。

Sherman博士は出願時に既に広く利用されている薬の製造方法と同じ方法を特許しようとしていた、或いは、その疑いが十分にあったとした地裁の判断に明白な誤りはない。 556特許出願をするにあたりSherman博士は明細書で記載した先行技術に対する説明は誤解を招くほどに不十分であることを周知していたと理解される。 さらに、Sherman博士は法廷で明細書に記載した実験をしていなかったことを認めた。 さらに、PTOに対して引例の開示内容に対して出願代理人と専門家を使って虚偽の陳述をしたことは明白である。

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上記したようにSherman博士は引例に対する好適な解釈の主張をしたというレベルではなく、博士自身が周知していた事実と異なる主張をしたのである。 Sherman博士が当時(出願時)UCB社の実際の製造方法、或いは、Univasc錠剤がモエクシプリル・マグネシウムの含有量を正確に知っていたか否かは問題ではない。 重要なのは、Sherman博士は合法的な主張と重大な事実に対する虚偽の主張との間を分けるラインを超えてしまったことを十分に認識していたということである。 全体としてSherman博士の行為に対する一連の証拠は博士の不誠実さのパターンを証明している。 然るに、地裁の判断、「博士の行為に関する一連の証拠からPTOを騙す意図が唯一合理的に導き出せる推論である」を支持する。

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結論:

地裁は博士の不公正な行為によって556特許を権利行使不能であるとした判断は地裁の裁量権の濫用ではない。

 

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上記事件(Apotex v UCB)以前

Post Therasense Decisions

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Therasense判決(2011CAFC大法廷判決)によってIC(権利行使不能に至る不公正行為:Fraud)を立証するための挙証基準が上がった。 その後、数件のICをメインの争点とするCAFC判決がでた。 それら判決においてTherasense事件の判示がどのように解釈されているかを検討した。 CAFC3人のJudgeパネルにより判決文の温度差はあるものの、結論としてICの認定基準はかなり高くなっていると言えよう。

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Summary of Therasense Decision (Fed Cir. en banc: 2011)

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To prevail on the defense of inequitable conduct, the accused infringer must prove that the applicant misrepresented or omitted material information with the specific intent to deceive the PTO.

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The accused infringer must prove both elements, “intent” and “materiality” by clear and convincing evidence.  No sliding scale. – Intent and materiality must be independently proven.

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The intent element can be proven by circumstantial evidence (not direct evidence) but it must be the single most reasonable inference derived from the circumstantial evidences. 「騙す意図」というのが状況証拠から唯一、最も合理的に推論されるものでなければならない。

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For materiality, “a new but-for materiality standard” was introduced, which requires courts to determine whether the PTO would have allowed the claim if it had been aware of the undisclosed reference. 情報がPTOに正しく伝わっていればクレーム(特許)が許可されなかったであろう。

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The exception to prove “but-for-materiality” is that in cases involving Affirmative Egregious Misconduct, “but for materiality” needs not be proven.  For instance, the submission of an unmistakably false affidavit will likely constitute the affirmative egregious misconduct. BUT-FOR Materialityの例外としては「甚だしく悪質な行為“例えば重要事項を宣誓書で偽る”」がある場合にはBUT FORが証明されなくとも重要性の要件の証明となる。

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(1)  Powel v. Home Depot (Fed. Cir. Nov 2011)

Powellは審査を促進するために、特許でカバーされる製品(電動ノコの安全カバーに関する)の製造販売を理由にMPEP708.02によるMake Specialの申請をし、その適用を受けていたが、Home Depotとの契約が頓挫したため既に製造販売の計画を中止し、Special Statusを受ける状態ではなくなったが、Powellは当該事実を黙認していた。黙認された事実はTherasense判決の「重要性」の要件を満たさないのでIC(Inequitable Conduct)を構成しない。

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(2)  Aventis Pharma v. Hospira (Fed. Cir. April 2012)

発明者が自己の発明に至るための重要な実験(提出されなかった参照文献に開示されていた)を開示した参照文献をIDSせずに問題点を開示した先行技術文献のみをIDSとして提出した行為は、重要性の要件とだます意図の要件(本来提出するべき参照文献をIDSしなかったという事実から類推されるもっとも妥当な単一の理由である)を満たすとし、IC(Inequitable Conduct)と判断した。

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(3)  1st Media v. Electronic Arts 他(SONY Ent’t America) (Fed. Cir. Sep 2012)

許可可能通知発行後であって登録料納付前の期間(所謂3ステージ)対応欧州特許出願のSRY表示の引例が引用された。当該Y引例をIDSしなかった理由に対する発明者とその代理人の証言は信憑性に欠くところがあるが、Therasense判決による「騙す意図」は証明されていない。 即ち、発明者も代理人も(a)引例の存在を周知していた;(b)引例の関連度合(重要性)が高いことを周知していたかもしれない;(cUSPTOに知らせなかった;

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上記(a)〜(c)の事実認定ではTherasenseで判示されたIC (Inequitable Conduct)の証明には不十分である。「騙す意図」を証明するには(A)引例の存在を周知していた;(B)その重要性を周知していた;(C意図的にそれを開示しなかった。という3つの要件が証明されなければならない。本事件では特に(C)の証明が欠落している。

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SONYによる裁量上訴(201334)の後、合衆国最高裁は総務長官(Solicitor General)に意見を求めた。(2013513)

⇒ Solicitor Generalは最高裁での審理を否定。(20139月)

上記においてはSONY v. 1st Mediaの上訴が認められる可能性がある(?)と述べたが20139月にSolicitor General(合衆国の総務長官)の意見がでた。 それによると最高裁で裁量上訴を認めるべきではないとのこと。 その理由は、Therasense大法廷で判示された法理は正しいということと、SONYが当該法理を極端に硬直的に解釈しているということと、本事件の下級審において「重要性」に関して議論がされていないのでTherasense大法廷の法理を見直すには不十分である。 要は、「騙す意図」の証明には(1)情報を周知している;(2)当該情報が重要であることを認識している;そして(3)当該情報を審査官に意図的に知らせなかった。という3つの項目を証明する必要がある。 即ち、情報の「重要性」は「騙す意図」を証明するためにも不可欠な要件である。 さらに、Therasense大法廷判決が出てから2年程しか時間が経過しておらず当該法理を見直すために十分なPost-Therasense判決がでていない(即ち時期尚早である)。

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⇒ 上告が棄却。(20131015日)

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(4)  Parker Vision v. Qualcomm (M.D. Fla., Jan, 2013)

本事件はCAFC判決ではないがNoteworthyと思います。出願審査段階でPaker Vision合計580項目の先行技術文献IDSしていたという事実に対して、関連性の高い情報(先行技術文献)を埋没させようと出願人が意図していたとQualcomm側が主張し、ICが成立すると反訴した。 Parker580項目もの先行技術文献をIDSしたという事実認定から「PTOを騙す意図」を持って実施したということが最も合理的に導き出せる単一の推論であるとは言えないと地裁は判断した。

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 (5) Intellect v. HTC (Fed. Cir. Oct. 09, 2013)

特許権者: Intellect Wireless, Inc.

被疑侵害者: HTC Corporation and HTC America, Inc

問題となった特許: Intellect2つの米国特許(USP7266186USP7310416

電話の相手側が画像に表示されるポータブル電話に関する発明。

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Intellectの発明者Henderson氏は引例の地位を否定するために、規則131条に基づく宣言書によって発明日を引例の日よりも遡及することを試みた。 最初の131条宣言書において発明の実施化の日に関して明らに偽りの陳述(unmistakably false)をした19937月時点でHenderson氏は発明の実施化を証明するための試作品の実演も何もしていなかった。その後の131条宣言書において最初の宣言書の明らかな虚偽を認めることなく、製品の仕様書及び梱包の領収書を添付するなどし、さらに発明の実施化に対する虚偽の陳述をした。

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地裁において宣言書で明らかな虚偽の陳述を「重要性の要件」を挙証する例外の「甚だしく悪質な行為(Affirmative Egregious Misconduct)」に相当すると判断し、Therasense大法廷判決の法理に基づく「重要性」の要件が証明されたと判断した。  

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尚、状況証拠(初回と2つめの宣言書において発明の実施日に対する明らかな虚偽を述べた)によって、出願人がPTOを騙すという目的で実行されたことが、唯一、最も妥当に推論される(single most reasonable inference: see (I) below)と判断し、Therasense大法廷判決の法理に基づく「意図」の要件が証明されたと判断した。

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上記によりHerndersonの行為は不公正行為を構成すると判断し、Herndersonの2つの特許(USP7266186USP7310416)を権利行使不能とした。

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Fed Cirは地裁判決を全面的に支持した。

 

(6)  Ohio Willow Wood v. Alps South (Fed Cir. Nov. 15, 2013)

特許権者: Ohio Willow Wood

被疑侵害者: Alps South LLC.

問題となった特許: US 5,830,237

義肢(人口肢体)に使用する装着具であって、義肢使用時の苦痛を和らげる手足の切断部を覆う緩衝靴下型の装具に関し、内面にのみゲルを塗布し、外面に漏れないことを特徴とする。

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本事件において侵害訴訟開始後、Ohio Willow Wood社(以下Ohio)の271特許を無効にするためにAlpsは2度再審査を提起した。 2回目の再審査請求において、先行技術文献とその先行技術には明示されていない特徴(271特許を無効にするために要となる特徴)を補完する専門家の証言(宣言書)とを伴い再審査を請求した。 

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審査官はOhio271特許を無効と判断したがOhioは審判請求し、審判請求趣意書において証言者(専門家)の信憑性を攻撃するために、当該証言者は本事件の結果に利害関係を持つ者271特許を無効にできると利益となる)であり、その証言を補強する証拠なしには証言の信憑性はないと主張し、審判においてOhioの主張が通り、271特許の有効性が維持された(非実質的な補正はある)。

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地裁判決にあるように、Ohioの審判趣意書における主張(例:「証言者は利害関係者である」)はその根拠(裏付ける証拠)が全くないばかりかOhioは再審査の前に周知していた重要な情報をIDSしていないという事実が露呈した。 

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CAFC判決を読む限り理解に苦しむが、地裁においてはOhioの不公正行為を認定しなかった(略式判決)。 その後、控訴されCAFCは不公正行為に対する略式判決(不公正行為を構成しない)を破棄差し戻しとした。 

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本判決で述べられているOhio側のアクション(再審査係属中)がすべて事実とするならばTherasense判決のBUT-FOR Materialityを満たすだけではなく、重要性の要件の例外としてあるAffirmative Egregious Misconduct著しく悪質な行為)をも満たすであろう。 さらに、これら状況証拠から唯一妥当に導き出される推論は「PTOを騙す意図」であることは間違いなかろう。

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