Innova/Pure Water, Inc., v. Safari Water Filtration System, Inc. 

 

C.A.F.C. 判決 20040811

Florida中央地区連邦地裁より控訴された事件

United States Court of Appeals for the Federal Circuit No. 04-1097

 

Summarized BY Tatsuo YABE on August 31, 2004

 

 

Yabe Comment:

 

本事件においては機械系の特許明細書でよく使用する表現 "operatively connected"(連動連結する状態:或いは機能的に連結する状態という日本語明細書の英訳に良く使う表現です)の解釈に関して議論がなされた。 本件特許独立クレームにおいては operatively connected (operatively associatedも同様に使用された)の表現があるが,実施例(図面を含む)においてはキャップとフィルターが強固に且つ物理的に固定された状態しか開示されておらず、Safari社は同クレーム用語はそのような強固な固定的な連結に減縮解釈されると主張した(事実下級審ではその主張が認められた)。 しかし本法廷ではSafari社の主張(及び下級審の解釈)を真っ向から否定し、下級審に差戻した。 さらに、本法廷では「出願人が明細書に一つだけの実施例を開示していたとした場合であっても、法は裁判所に対してクレームを当該単一の実施形態に拘束された状態で解釈することを要求していない」と結論づけた。 従って従って本事件の判示に鑑みて"operatively connected(或いは operatively associated)"という用語を明細書で使用するのは比較的安全であると言えるが、無用な論争を避けるためには operatively connected (associated) という用語はdirectly connected ; indirectly connected; detachably connectedの状態を含むという但し書きを明細書のどこかに追記しておくことを推奨します。 

 

 

概要:

Florida中央地区連邦地裁の被告であるSafari社の行為を非侵害とした略式判決を不服とし米国特許第5609759号の権利者であるInnova社がCAFCに控訴した。

’759特許はボトルのフィルターキャップに関する発明に関し水フィルターAssemblyと同Assemblyを包括する容器に対するクレームを備えている。  発明の概要はチューブ上のフィルター材をボトル容器の水とバルブとの間に配置することによってボトルから水を出す前に水がフィルターを通過する構造になっている。 同759特許の図1−12に各種形態が示されている。 Florida連邦地裁ではクレーム1の operatively connectedという用語がチューブ上のフィルター材がキャップに対して物理的に強固ニ係合し一体的構造となる状態が要求されると解釈し、Safari社の環状フランジ状の製品においては同クレーム1,15で要求する筒状(チューブ型)フィルターが強固な連結手段によってキャップに固定されているものではないとしてSafari社の非侵害の略式判決の申立てを認めた。

                   明細書の開示内容からの検討:

 

Bradley判事の有名なコメント:

 

「或る者は言う「特許のクレームはワックスの頂部のようなもので、単に明細書を参照するだけでいかなる方向にも回転或いは捻ることが可能であり、同クレームの用語が表現するもの以上に幾分かを包括することもできるし、或いは、それ以外のものを包括することも可能である。 クレームの文脈から判断し、クレームの内容理解を深めようということがしばしば行われるが、それはクレームの意味を変化させたり、本来の意味を離脱するために実行されるものではない。 クレームは法定要件であって、特許権者が彼の発明が何であるかを定義するという目的で記載され、そこで使用される用語の通常の意味合いを離脱して解釈されるということは公共にとっても不公平であって、且つ、法に抵触することにもなる。 本法定において上記のことは頻繁に言及されてきたので本主題をここでこれ以上言及する必要はない。」

 

唯一の実施例しか存在しないとしても、特許権者が明瞭な減縮解釈の意図を示していない場合には、該唯一の実施例にクレームの用語が限定的に解釈されることはない。 Liebel-Flarsheim, 358 F.3d at 906 (quating Teleflex, Inc. v. Ficosa N. Am. Corp., 299 F. 3d 1313, 1327 (Fed. Cir. 2002))

 

Operatively connectedの通常の意味合いは2つの部材が物理的な結合によって強固に固定される状態であるという下級審の解釈は間違いである。 問題となるクレームにおいて筒状フィルターとキャップとが一体的になるように強固に固定されるということを要求されるということはない。 同表現 "operatively connected" は特許明細書(一般の)において頻繁に使用されており、クレームされた2つの部材の機能的な関係を意図するものである。 759特許で使用されるように、一般的に言って、operatively connectedはクレームされた2つの部材が規定される機能を達成するために連結されることを意味する。

 

下級審が、operatively connectedの一般的な意味合いを理解するために、operativelyと connectedの用語の意味を辞書で調べたことは正しいアプローチであったが、759特許に開示されたチューブとキャップとの連結状態の実施例を基に、同用語の一般的な意味合いを超えて解釈してしまったことは間違いである。

 

さらに本発明に意図された目的に対する下級審の理解は間違っている。 下級審は本願に意図された目的とはフィルターAssemblyを一体的に形成することであると解釈しているがこれは間違いである。 本発明の目的は同発明物をボトルに使用し、水を濾過することである。

 

operatively connectedという表現に加えて本件クレームでは operatively associatedという表現を使用している。 connectedとassociatedは異なる意味合いで使用されていたであろうと推論することは相当であるかもしれない、しかし本願においては connectedが強固な一体結合を示すという意味合いで使用されたという記載がない。 然るに本件特許においては、特許権者がこれら2つの異なる用語を用いて類似したる概念を表現したと解することが妥当である。

 

      明細書及び経過書類:

 

Safari社は759特許(本件特許)の明細書及び経過書類において operatively connected という用語がその最大限解釈可能な幅を持つことを明瞭に且つ疑いの余地を残すことなく否定しており、operatively connected という用語がフィルターチューブとキャップが強固に物理的に固定された実施形態のみを包括するというように解釈されるということを公共に告知していると主張している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

25:筒状フィルター  12:フィルターAssy  15(215):キャップ  12(212):バルブ  

 

 

Safari社は、759特許の明細書を最初から最後まで読破したとしても、チューブとキャップが強固に一体的に固定連結されている形態以外の状態が開示されていないと主張している。 然るに、Safari社の曰くは、裁判所は明細書に開示されたもの以上に operatively connectedの意味合いを拡大解釈することは不当であるし、本特許の特許権者は operatively connected の定義に関して自らが辞書編集人になって物理的な強固な連結であると定義していると主張している。 本法廷は上記Safari社の主張に賛同できない。

 

Abstractには以下のように記載されている:

 

The tube is operatively connected to the cap second surface at the tube second open end by sonic welding, a mechanical connection, or adhesively.

 

しかし、そもそもAbstractは本件特許明細書の内容を一般的にその概要を記載しているのみで、より詳細な開示は明細書の残りの部分に存在する。 さらに、同Abstractの「機械的連結 (mechanical connection)」という用語をSafari社及び下級審は強固な物理的な連結状態を要求していると解釈し、Safari社の製品の形態(即ち、ボトル口に螺合(螺子締め)されるキャップによって密閉される環状フランジによって同ボトル口にフィルター材を吊り下げ状態で配置する構造)を権利範囲に包括できないと理解しているようである。 本法廷はこの理解には賛同できない。 少し手首を捻って螺子締めすると、Safari社の構造においてもボトル口は強固に螺子締めされるのでボトルのリップ部にフィルターを機械的に固定するのではないか。

 

明細書の According to the present invention(コラム1の23行目:Summary of the Inventionと記載するのを忘れた箇所:著者注)”で始まる箇所には実際のフィルター部材は他の部材に接着剤によって、機械的に、或いは溶接によって連結されていると開示しており、この記載を基に、 “associated with”という解釈は強固に物理的に連結された状態を包括することに疑問の余地はない。 しかしながら”associated”という言葉はクレームに規定されている部材(複数)どおしが何らかの関連性を持つ状態で組み合わさっているということを意味するに留まる。 Safari社の主張に対する最も端的な解答は「出願人が明細書に一つだけの実施例を開示していたとした場合であっても、法は裁判所に対してクレームを当該単一の実施形態に拘束された状態で解釈することを要求していない」

 

Safari社はさらに、“operatively connected”の解釈が出願人が審査経過中に特許を取得するために行った解釈と整合性を備えているので、Innova社が他のいかなる構成でも可能であると主張することを抑止すると主張している。 出願人は103条拒絶を受けて原クレーム1から直接従属する原クレーム13(フィルターの材料を規定しているのみ)の特徴で原クレーム1を減縮することで許可を得た。 

 

さらに出願人は応答書で以下のように述べている:

 

従属クレームは引用された先行技術に対してより明瞭に且つ疑問の余地なく識別されると考えている。 引用された先行技術のどこにも従属クレーム2の接着剤による連結、従属クレーム3の溶接による連結、或いは、従属クレーム5の機械的連結、さらには従属クレーム6のOリングによる連結、ひいては従属クレーム17の機械的連結のより詳細な規定に関して言及されていない。 

 

Safari社は上記応答に鑑みてInnova社が筒状フィルターがキャップに強固に連結固定されている状態に減縮されないということを主張することを禁ずることになると意見を述べているが、Safari社は上記応答書の記載によって同結論に何故達するのかその理由が説明できていない。 上記Innova社の応答を慎重に検討するも本裁判所は、Innova社が筒状フィルターがキャップに強固に物理的に係合していないような機械的結合の状態をその権利範囲に含まないということを明瞭且つ誤解なく意思表示をしているものではないと判断する。 さらに、審査官が許可したクレーム1及び15は筒状フィルターがキャップに強固に物理的に固定されている状態を示す実施例を特に規定しているわけではない。 さらにクレーム識別論(claim differentiation theory)によると従属クレームの特徴をその従属基の独立クレームに盛り込んで解釈することはできない(例外はあるが)。 特定の事案を除いて、通常の場合にはクレーム識別論とは従属クレームの特徴をその従属基の独立クレームに読み込まないということを意味する。

問題となった特許: 

Innova社のUSP5,609,759(Bottle Filter Cap)のクレーム1と15  


1. A filter assembly for use with a bottle having a circular cross-section neck or open end to simultaneously cap the neck or open end and filter liquid poured out of the bottle through the neck or open end, comprising:

a tube of filtering material, having a substantially continuous liquid-porous side wall a hollow interior, a first closed end, and a second open end;

a cap for a bottle neck or end, having a fitting portion thereof for cooperating with a bottle neck or end and closing a neck or end, said cap having first and second substantially opposite surfaces;

a manual valve operatively associated with said cap, in fluid communication with said tube of filtering material and manually movable between a position defining means for allowing liquid flow through said tube and a position defining means not allowing liquid flow through said tube; and

said tube operatively connected to said cap second surface at said tube second open end, and

wherein said filtering material comprises a substantially continuous self-supporting, self-venting body of activated carbon and binder having a porosity of about 10-120 microns.

15. A container for dispensing filtered water, comprising:

a plastic bottle having an open neck with an inside diameter of about 50 mm or less, and with a cap engaging portion;

a plastic cap having a bottle neck engaging portion, said cap and neck engaging portions cooperating to releasably hold said cap on said neck, said cap having first and second substantially opposite surfaces;

a self-supporting, self-venting tube of or containing filtering material capable of reducing the level of chlorine in water passing therethrough by at least 50% at a flow rate of about 5 ml/second, said tube having a substantially continuous liquid porous side wall having an axis, a hollow interior, a first closed end, and a second open end;

a manual valve operatively associated with said cap, in fluid communication with said tube of filtering material and manually movable between a position defining means for allowing liquid flow through said tube and a position defining means not allowing liquid flow through said tube; and

said tube operatively connected to said cap second surface, and said tube having an outside diameter less than said inside diameter of said neck, and positioned with respect to said-cap within said bottle so that said tube axis is substantially transverse to said second surface and so that flow of liquid through said tube is primarily radial with respect to said tube axis during filtering, and through said side wall.

   

■ 判決:

一部認容、一部破棄、差し戻し