USPTO Issued 112 Exam Guidance on Computer-Implemented Functional Claim Limitation

Published 2019-01-07: 

LINK

Summarized by Tatsuo YABE 2019-01-06

|

201917日、USPTO長官Iancu氏(昨年2月に就任)はコンピューター関連発明で機能表現されたクレームの112条審査に対する審査ガイダンスを発表した。本審査ガイダンスは、特にコンピューター関連発明で機能表現された構成要素を含むクレームの審査に関し、Part 1ではmeans + function形式の構成要素を含むクレームに対する明瞭性の審査(112b項)、さらに、Part 2では機能表現されたクレームの構成要素に対し112(a)項の「開示要件」及び「実施可能要件」をどのように判断するかを説明している。

|

Part 1では2015年のWilliamson判決(CAFC大法廷判決)の内容を詳しく説明している。即ち、コンピューター関連発明で機能表現されたクレームの構成要素にどのような条件を満たす場合に112(f)項解釈が適用されるのかを説明している。Williamson判決は(f)項解釈に対する重要な判決である(実は1994年のIn re Donaldson大法廷判決後に(f)項解釈に対するCAFC大法廷判決はでていない)にも拘らず審査官にMemorandum等でその内容すら通知されず(前長官Leeさんに熱意が掛けていた?)、今更ではあるがこの判決の重要性を認識し(f)項解釈の適用に対する審査官の審査の統一性を図る目的で今回本気度の高いIancu氏がガイダンスとして通知したと理解する(筆者)。

|

尚、機能表現された構成要素に112(f)項解釈が適用される場合に、当該「機能」を実現するための構造(アルゴリズム)が明細書に十分に開示されていない場合には112(b)項の明瞭性の要件を満たさないとしてクレームは拒絶される。尚、当該「機能」に対応する構造(アルゴリズム)が十分に開示されていないということは112(a)項の開示要件違反、及び、実施可能要件違反にも繋がるということを審査官に説明している(以下の図を参照)。

|

即ち、審査官に対して112(f)項と112(b)項の「明瞭性の要件」、112(a)項の「開示要件」と「実施可能要件」はリンクしており、それを念頭に審査をするよう指示している。

|

|  

Part 2では112(f)項解釈が適用されない機能表現された構成要素に対しても112条(a)項の「開示要件」及び「実施可能要件」に関してAriad大法廷判決(Fed. Cir. en banc: 2010)及びIn re Wands (Fed. Cir. 1998)に基づき審査をするように注意を喚起している。

|  

Effective Date:

本審査ガイダンスは201917日をもって有効

201917日以前或いは以降に出願されたすべての出願審査及び権利化されたすべての特許に適用する。

|

以上筆者

|

-----------------------------------------------------------------

本審査ガイダンスは、特にコンピューター関連発明で機能表現された構成要素を含むクレームの審査に関し、Part 1ではmeans + function形式の構成要素を含むクレームに対する明瞭性の審査(112b項)、さらに、Part 2では機能表現されたクレームの構成要素に対し112a項の「開示要件」及び「実施可能要件」をどのように判断するかを説明している。

|

コンピューター関連発明で機能表現されたクレームに対する昨今の重要判決としてWilliamson判決(2015年大法廷)がある。尚、開示要件に対する昨今の重要判決としてはAriad v. Eli Lilly判決(2010年大法廷判決)がある。

Williamson v. Citrix Online LLC (Fed. Cir. 2015: en banc)

Ariad Pharm. Inc. v. Eli Lilly (Fed. Cir. 2010: en banc)

|

Part 1:

■ 審査官によるクレーム解釈:

まずはクレーム解釈にはBRI基準で(合理的に最大限広く)クレームの意味合いを解釈する。機能表現された構成要素に対しても明細書の開示と整合性を考慮したうえでBRI基準に基づきその意味合いを解釈する。尚、機能表現されたクレームの構成要素に対しては112(f)項の解釈が適用されるか否かを判断する。尚、112(f)項が適用されるか否かはMPEP2181(9th Edition Rev.08, 2017, Jan. 2018)の3Prongテストに基づき判断する。

|

以下の3つの要件(3-Prong s)全てを満たす場合112(f)項で解釈する;

Prong A

クレームの構成要素にMeansあるいはMeansに代わる用語(代替え用語)を使用しているか?

Prong B

Means或いは代替え用語が機能表現で修飾されているか(典型的な例としては Means for・・・ または他の連結用語で機能表現と結びついているか)?

Prong C

Means或いは代替え用語が、クレームされた機能を達成するための十分な構造、或いは、材料で修飾されていない

原文はReference [A]参照:

|

■ meansという用語が使用されていないクレームの構成要素には112(f)項の解釈が適用されないという推定が働くが、当該推定の反駁に対し詳述した2015CAFCの大法廷判決、「Williamson判決」の概要は以下の通り:

Williamson判決での主たる争点はUS Patent6,155,840クレーム8a distributed learning control module112(f)項で解釈するか否か、さらに、当該構成要素が112(b)項の基に明瞭であるか否か。まず最初にクレーム8の用語、a distributed learning control module112(f)項解釈の適用を受けるか否かを検討した。

|

a distributed learning control module for receiving communications transmitted between the presenter and the audience member computer systems and for relaying the communications to an intended receiving computer system and for coordinating the operation of the streaming data module.

|

用語「module」はmeansを置換したにすぎない。 さらに、上記構成要素は3つの機能(for receiving: for relaying: for coordinating)を規定しており、その形式は従来の”means plus function”用語の形式と同じである。module以外でも、例えば、mechanism element deviceなども十分明白な構造をその用語に内在(含意)するものではなくmeansを使用するのと等価である。本事件のmoduleという用語は何ら構造を意図するものではない。Moduleの前に来るdistributed learning controlという接頭語もmoduleという用語に構造を附与するものではない。明細書及び経過書類いおいてもdistributed learning control moduleが当該用語に意味のある構造を与える開示・記録はない。

Williamson判決の要旨の原文はReference [B]参照:

|

■ 112(f)項解釈された構成要素の「機能」に対する明細書の対応するstructure(corresponding structure)とは?明細書に当該「機能」に対するcorresponding structureが開示されていない(或いは不十分な開示しかない)場合には112(b)項との関連は?

上記のように、meansという用語を使用していないのでdistributed learning control moduleという構成要素には112(f)項解釈を適用しないという推定が働くが、当該推定は反駁され当該用語に(f)項解釈を適用する。尚、(f)項解釈をするということは当該用語で機能表現された特徴の権利範囲を解釈するのに明細書で対応するStructurecorresponding structure、即ち、アルゴリズム)を参酌する。当該構成要素には3つの機能が規定されており、receivingrelayingという機能に対応するstructure(アルゴリズム)は明細書に開示されていたが、 coordinatingという機能に対応するStructure(アルゴリズム)が明細書に開示されていない。依って、distributed leaning control moduleという構成要素のcoordinatingという「機能」に対する権利範囲が不明瞭であるとして112()項の明瞭性の要件を満たさないのでクレーム8は無効と判断された。

|

上記のように、コンピューター関連発明において、クレームに112(f)項解釈が適用される機能表現された構成要素がある場合、当該機能表現された機能の全て(entire claimed function)を実行するための対応する構造(corresponding structure:アルゴリズム等)が明細書に十分に開示されてない場合には当該クレームは112(b)項の明瞭性の要件を満たさないと判断する。尚、この場合には明細書は112(a)項の開示要件も満たさないと判断されるであろう。明細書に機能を実現するための対応する構造(corresponding structure)が開示されていないということであればクレームされた発明を実施(製造或いは使用)できる開示がないとし112(b)項の実施可能要件も満たさないと判断される。

|

Part 2:

コンピューター関連発明のクレームの構成要素が112(f)項解釈の適用を受けない場合でも112(a)項の「開示要件」及び「実施可能要件」を満たすか否かを検討されなければならない。

|

A: Written Description Requirement under 35 USC 112(a): 112(a)項の「開示要件」

開示要件を満たすには、クレームされた発明を出願時に発明者が所有していたことを当業者に合理的に伝達できるレベルに明細書の記載が充足していること。”the test for the sufficiency of the written description is whether the disclosure of the application relied upon reasonably conveys to those skilled in the art that the inventor had possession of the claimed subject matter s of the filing date” – Ariad v Eli Lilly (Fed Cir. en banc: 2010)

|

開示要件を満たすために、クレームされた発明をどの程度詳述するべきかはクレームの性質と範囲、及び、技術分野の複雑さと予見可能性によって異なる。

|

審査において開示要件を判断するためには、クレームの権利範囲と明細書の開示範囲とを比較し出願人がクレームされた発明を所有していたことを明細書において実証しているか否かで判断する。

|

112(a)項の「開示要件」の目的はクレームで規定された権利範囲(排他権)が明細書で表現された発明者の技術分野における貢献度合いを超えることがないように保証することである。Lizard Tech Inc. v. Earth Resource Mapping (Fed. Cir. 2005)

|

クレームされたGenusに対する開示要件を満たすためにどれだけspeciesを明細書に記載するべきかに対して明確なルールはない、しかしGenusの技術分野及び性質とその広さによって異なる。要は明細書に開示されたspeciesによって、クレームされたGenusなる発明を発明者が所有していたことを当業者が理解できるのであれば当該Genusは明細書で十分にサポートされていると判断される。Hynix Semiconductor Inc. v. Rambus Inc. (Fed. Cir. 2011)

|

コンピューター作動型のソフトウェア関連発明を審査する場合、審査官は、クレームされた機能を実現するためのコンピューター及びアルゴリズムが明細書に十分詳細に記載されており出願時に発明者がクレームされた発明主題を所有していたと当業者が合理的に結論づけることができるか否かで判断する。

|

B: Enablement Requirement under 35 USC 112(a): 112(a)項の「実施可能要件」

実施可能要件に関してCAFCは以下のように述べている、当業者が発明を実施するために必要となる実験は多大な数が必要となるとしても当該実験が習慣的(routine)なもので、或いは、当該実験を行う方向性に関して明細書で合理的なガイダンスが示されているのであれば、クレームされた発明は十分に実施可能であると判断される。Vasudevan Software Inc. v. MicroStrategy Inc. (Fed. Cir. 2015)

|

しかし過度な実験(undue experimentation)が必要となる場合には実施可能要件を満たさないとしてクレームは無効となる。過度な実験(undue experimentation)が必要となるか否かはWandsファクターで判断する:Wandsでは以下のファクター[1][8]を考慮に入れて判断する:[1] 必要となる実験の数;[2] 明細書で開示された実験に対するガイダンス;[3] 明細書に実例(working examples)が開示されているか;[4]発明の性質;[5] 従来技術の状態;[6] 当業者の相対的な能力;[7] 技術分野の予見可能性;[8] クレームの広さ。In re Wands (Fed. Cir. 1988)

|

明細書に当業者にとって周知な内容まで記載する必要はない。しかしクレームされた既知ではない発明の新規なる部分を実施するのに当業者の知識に依存することはできない。

|

明細書は、過度の実験(undue experimentation)をすることなく、クレームされた発明の権利範囲全体を当業者が実施できるように教示しなければならない。Trs. of Boston University v. Everlight Elecs. Co. (Fed. Cir. 2018)

|

明細書の開示によって当業者を実施可能にする範囲(scope of enablement)はクレームの権利範囲(scope of protection sought by the claims)に匹敵するか否かで判断する。この判断をするために、審査官は[1] 明細書の開示に対してクレームは如何に広いのか? 及び、[2] 過度の実験をすることなく当業者がクレームの権利範囲の全域を実施できるか否かで判断する。

|

Effective Date:

本審査ガイダンスは201917日をもって有効

201917日以前或いは以降に出願されたすべての出願審査及び権利化されたすべての特許に適用する。

|

References:

|

[A]  MPEP2181(9th Edition Rev.08, 2017, Jan. 2018)の3Prongテスト

Examiner will apply 35 U.S.C. 112(f) or pre-AIA 35 U.S.C. 112, sixth paragraph to a claim limitation if it meets the following 3-prong analysis:

|

·         (A) the claim limitation uses the term “means” or “step” or a term used as a substitute for “means” that is a generic placeholder (also called a nonce term or a non-structural term having no specific structural meaning) for performing the claimed function;

·         (B) the term “means” or “step” or the generic placeholder is modified by functional language, typically, but not always linked by the transition word “for” (e.g., “means for”) or another linking word or phrase, such as "configured to" or "so that"; and

·         (C) the term “means” or “step” or the generic placeholder is not modified by sufficient structure, material, or acts for performing the claimed function.

·         |

[B]  Williamson判決の要旨

Williamson大法廷判決の結論を一言で言うならば、CAFCMeans + Function解釈(112条第6項解釈)をするか否かの認定基準を緩和したということである。大法廷多数意見の理解では2004年のLighting World v. Birchwood事件以降、meansという用語を使用しない場合には112条第6項解釈の適用を受けないという推定が強力になりすぎ、meansという用語さえ使用しなければ112条第6項の適用を免れるというレベルまで判例法が蓄積されてきた。このように強力になりすぎた推定は112条第6項の立法趣旨に反するものであり、今後は2004年のLighting World事件以前の判断基準を適用すると判示している。最も関連する判示部分は以下である:

|

The standard is whether the words of the claim are understood by persons of ordinary skill in the art to have a sufficiently definite meaning as the name for structure. Greenberg, 91 F.3d at 1583. When a claim term lacks the word “means,” the presumption can be overcome and § 112, para. 6 will apply if the challenger demonstrates that the claim term fails to “recite sufficiently definite structure” or else recites “function without reciting sufficient structure for performing that function.” Watts, 232 F.3d at 880. The converse presumption remains unaffected: “use of the word ‘means’ creates a presumption that § 112, ¶ 6 applies.” Personalized Media, 161 F.3d at 703.

|

[C] 35 U.S.C. 112:

(a)

The specification shall contain a written description of the invention, and of the manner and process of making and using it, in such full, clear, concise, and exact terms as to enable any person skilled in the art to which it pertains, or with which it is most nearly connected, to make and use the same, and shall set forth the best mode contemplated by the inventor or joint inventor of carrying out the invention.

|

(b)

The specification shall conclude with one or more claims particularly pointing out and distinctly claiming the subject matter which the inventor or a joint inventor regards as the invention.

|

(f)

|

An element in a claim for a combination may be expressed as a means or step for performing a specified function without the recital of structure, material, or acts in support thereof, and such claim shall be construed to cover the corresponding structure, material, or acts described in the specification and equivalents thereof.

|

(1) US Patent Related 

(2) Case Laws 

(3) Self-Study Course

(4) NY Bar Prep

(5) LINKS

Home