Supreme Court Lowers Standards for Granting

Attorney Fee Award for Exceptional Case under 35 USC 285

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Octane Fitness v. Icon Health and Fitness U.S. 12-1184

And

Highmark Inc. v. Allcare Health Mgmt. U.S. 12-1163

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最高裁は285条の「例外的な事案」の認定基準を下げた。

  Summarized by Tatsuo YABE

May 21, 2014

 

 

最高裁は2つの事件に対する判決を同日(2014429日)に出した。 最高裁判決によるとCAFCが判例法として適用していたBrooks判決(Brooks Furniture v. Dutailer 2005CAFC判決)の法理(判断基準)を全面的に否定した。 Brooks事件の法理では285条の例外的な事案を認定するには@客観的に根拠のない訴訟(objectively baseless)、且つ、A主観的悪意(subjective bad faith)で訴訟を起こしたという2つの要件を「明白かつ説得性」のある挙証基準(C&C基準)で証明しなければならない。 

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今回最高裁はこのBrooks判決の法理(判断基準)を完全に否定した。即ち、「例外的な事案」とは通常の意味合いで解釈するべきで、即ち、訴訟における一方当事者の実質的な強さ(準拠法および事実関係の観点から)が他方当事者と比べて顕著に秀でている、或いは、不合理に訴訟が行われたという意味である。 地裁は、事件の全貌を考慮しながら、事案が例外的なものであるか否かを事案毎に判断する裁量権を有する。

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285条に対する挙証基準は「C&C基準」ではなく、特許訴訟全体における挙証基準と同じで「証拠の優越性基準(Preponderance Evidence STD)」である。 

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尚、地裁は本来的に与えられた裁量権に基づき「例外的な事案」を判断してよいことが285条に規定されており、裁量権の行使に対する唯一の制限は事案が「例外的(exceptional)」である。 

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尚、当該地裁の判断に対する控訴審のレビュ(審理)の基準は「de novo基準」ではなく「裁量権の濫用(abuse of discretion)」である。

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上記に鑑み今後は地裁における285条の「例外的な事案」の認定がされやすくなることは当然予想される。 且つ、一旦地裁で「例外的な事案」と認定されると余程のことがない限り控訴審で破棄されなくなる(地裁が裁量権を濫用したという結論に達しないと破棄されない)。201364日のNew York TimesCAFCのチーフジャッジRaderがサンタクララ大学ロースクールのChien助教授とMercer大学ロースクールのHricik教授と共に地裁裁判官の裁量でもって285条をもっと発動するべきでると発表した(*1)。今回、まさに、最高裁はChief Judge Rader (+ロースクール教授2)のこの発言を後押しした。

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尚、昨年前半くらいからトロール対策法案が上院・下院から出ており、特にHR3309(2013125日に下院を325-91で通過)において285条を根本から改訂することが提案されている(例外的な事案ではなく、基本として敗訴側が勝訴側の弁護士費用を支払う)。 HR3309(*2)は現在上院において審理中で285条に対する改定案がそのまま上院を通るとは考えがたいが、今回の最高裁判決とトロール対策法案との関係も要Watchである。 即ち、今回の最高裁判決(2件)もトロール対策法案における285条の改訂によっては判例の効力を失うことになる。

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Highmark v. Allcare Health Mgmnt. Sys.
285
条の「例外的な事案 “Case is Exceptional”
合衆国最高裁判決 (By Justice Sotomayor)
2014-04-29

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2013101日:裁量上告受理

2014226日:口頭審理。 

2014429: 最高裁判決(全員一致判決)

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特許権者: Allcare Health Mgmt (US5,301,105):保険会社による医療費の払戻しが必要であるかを判断し、治療が認められまで払戻しを避けるための方法に関するビジネス手法の発明。

被疑侵害者: Highmark

地裁:非侵害の略式判決。285条の「例外的な事案」の要件を満たし、さらに規則11条の制裁措置、5.2Million($)の支払いを命じた。

控訴審: 非侵害(地裁判決)を支持。 しかし21285条の「例外事件」と11条制裁措置を否定。 3人のジャッジパネルは、285条の例外事件の構成要素である「@主観的な悪意の存在」をC&C基準の挙証責任で証明すること、よって上級審においては明白な誤審があったか否か(Clear Error STD)という基準でレビュすることには同意、但し、もうひとつの構成要素である「A客観的な根拠の不存在」に対する多数意見は、事実と法律が混在する証拠に基づく法律判断でありde novo reviewが妥当するとした。

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最高裁での争点:

The Patent Act provides that a "court in exceptional cases may award reasonable attorney fees to the prevailing party." 35 U.S.C. § 285. A case is "exceptional" if it is objectively baseless and brought in bad faith. After living with this case for more than six years, the District Court found that it was objectively baseless and brought in bad faith, and it awarded fees. Over a strong dissent, a Federal Circuit panel reversed, holding that a district court's objective baselessness determination is reviewed "without deference." Pet. App. 9a. The Federal Circuit denied rehearing en banc by a vote of six to five. One of the two pointed dissents from that denial accurately observed that the decision below "deviates from precedent * * * and establishes a review standard for exceptional case findings in patent cases that is squarely at odds with the highly deferential review adopted by every regional circuit and the Supreme Court in other areas of law." Pet. App. 191a.

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The question presented is: Whether a district court's exceptional-case finding under 35 U.S.C. § 285, based on its judgment that a suit is objectively baseless, is entitled to deference.

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地裁は、本事案は「客観的に根拠のない(objectively baseless)」、「悪意(”bad faith)」に基づく訴訟であると判断し特許権者Allcareに勝者側弁護士費用の支払いを命じた。 しかしCAFCは、「客観的に根拠のない訴訟」という地裁判断をde novo reviewするとし、弁護士費用支払いを否定し、大法廷によるヒアリングを6-5で否定した。

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メインの争点:「客観的に根拠のない訴訟(objectively baseless) 」と地裁が判断した場合に当該地裁判断に上級審は一定の敬意を支払うべきか?

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最高裁判決:

285条の「例外的な事件」に対する地裁判決のあらゆる側面に対して控訴審は「裁量権の濫用abuse of discretion」の基準で判断すること。Octane Fitness v. ICON Health & Fitness判決(本最高裁判決と同日)以前はBrooks Furniture v. Dutailer2005年のCAFC判決)がCAFCでの判断基準であった。 Octane最高裁判決はBrooks Furniture基準は極度に硬直的であるという理由で破棄した。 Octane最高裁判決において、地裁は285条に基づく「例外的な事案」を自身の裁量権を行使し判断することが可能であると判決した。 依って、Octane最高裁判決で本事件は解決された。 昔から、法律問題に対してはde novo基準、事実問題に対しては明白な間違いの基準(clear error STD)、裁量権に関わる事案に対する判断は「裁量権の濫用(abuse of discretion)」という基準でレビュされてきた。 Pierce v. Underwood (1988)

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Octane Fitness LLC v. Icon Health and Fitness
285
条の「例外的な事案 “Case is Exceptional”
合衆国最高裁判決 (By Justice Sotomayor) 2014-04-29

Sotomayor|

2013101日、最高裁上告受理。

2014226日、口頭審理。 

2014429: 最高裁判決(全員一致判決)

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特許権者:ICON USP6,019,710 (Exercise Equipment with Elliptical Movement)

被疑侵害者: Octane

地裁:Markmanヒアリング後に非侵害の略式判決。但し、285条の弁護士費用は認めない。

控訴審: 地裁判決を支持:

Octaneの主張:285条の構成要素の一つである「客観的に根拠のない」を「客観的に妥当性を欠く」に下げるのが妥当ではないか?

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最高裁での争点:

1. Does the Federal Circuit's promulgation of a rigid and exclusive two-part test for determining whether a case is "exceptional" under 35 U.S.C. § 285 improperly appropriate a district court's discretionary authority to award attorney fees to prevailing accused infringers in contravention of statutory intent and this Court's precedent, thereby raising the standard for accused infringers (but not patentees) to recoup fees and encouraging patent plaintiffs to bring spurious patent cases to cause competitive harm or coerce unwarranted settlements from defendants?

 

CAFCは地裁判決「Octane:非侵害」を支持したが、285条の「例外的な事案」とは認めなかった。CAFCの「例外的な事案(285条)」を認定するための2パートテスト(@ 「客観的に根拠のない」A「主観的な悪意」の適用の仕方 は硬直すぎないか? そのような硬直なテストは立法者の意思に反し、且つ、最高裁の判例に反していないか? その結果として被疑侵害者の挙証責任を高くし、特許権者が虚偽の侵害裁判を起こしやすくしていないか?

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最高裁判決:

Brooks Furniture判決の法理(2005年のCAFC判決)は極度に硬直的であり、地裁が特許法によって認められた裁量権を行使するのを著しく妨げることになる。 

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(a) 我々(最高裁)の検討は285条の文言に始まり、285条で終わる。285条:”The court in exceptional cases may award reasonable attorney fees to the prevailing party”.  285条は地裁に弁護士費用の支払いを命じる権限を与えている。 但し、当該権限は“例外的な事案”にのみ行使するという唯一の制限がある。米国特許法の条文には問題となる「例外的な事案」という用語を一切規定していない。 然るに当該用語は通常の意味合いで解釈される。 1952(特許法285条が発効した年)、連邦議会は当該用語を「一般的ではない」、「稀」、あるいは、「通常ではない」という意味で使用した。「例外的な事案」とは即ち、訴訟における一方当事者の実質的な強さ(準拠法および事実関係の観点から)が他方当事者と比べて顕著に秀でている、或いは、不合理に訴訟が行われたという意味である。 地裁は、事件の全貌を考慮しながら、事案が例外的なものであるか否かを事案毎に判断する裁量権を有する。

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(b) Brooks Furnitureの法理論は、本来的に柔軟な条文の文言に融通の利かない法理を重ねることになる。

(1) Brooks Furnitureは弁護士費用の支払いを許容する要件として2つのカテゴリーを過度に制限している。Brooksにおいて過度に制限された第1のカテゴリーは、事件が訴訟の違法性を要件としており、この基準ではそれ自体単独に処罰の対象になる行為(例:故意侵害、出願審査時のフロード、不公正行為など)の存在が要件となるだろう。 これは適切な基準ではない。 当事者の妥当性を欠く行為がそれ自体で処罰の対象になるレベルではなくとも、例外的であると判断される場合には地裁は弁護士費用の支払いを命じても良い。 事案が第2のカテゴリーに該当するには、地裁は、訴訟は客観的に根拠のないもので、且つ、主観的に悪意に基づき提起されたということを判断しなければならない。しかし主観的悪意の存在、或いは、メリットが極端に乏しい主張の存在を事件が示していれば通常の訴訟事件からは離反する例外的な事案に該当するかもしれない。 CAFCは上記2番目のカテゴリーをProfessional Real Estate Inventor. Inc. (PRE) v. Columbia Pictures Indust. Incの法理から導き出したが、当該PRE法理は285条には一切関連しないので285条で規定する「例外的な事案」の判断に用いるべきではない。

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(2) Brooks Furnitureの要件は厳しすぎるので285条を実質的に意味のない条文にしていると言えよう。 不正或いは悪意のある事件の当事者に費用を負担させる権限を裁判所は本来的に備えている。See Alyeska Pipeline Service Co. v. Wilderness Society 本判決において最高裁は285条の権限の発動を実質できなくするような限定的な解釈を否定している。 See Christiansburg Garment Co v. EEOC

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(3) Brook Furnitureの要件、「費用負担(fee shifting)を勝ち取るためには明白かつ説得性のある証拠C&C基準)で挙証しなければならない」は285条には妥当しない。 285条は特定の挙証責任を規定していない。 他の同等の「費用負担:Fee Shifting」に関する条文の解釈(最高裁の解釈)においてもそのような挙証責任を要求していない。See, e.g., Fogerty; Cooter & Gell v. Hartmarx Corp (1990); Pierce v. Underwood (1988) 寧ろ、特許侵害事件においては証拠の優越性の挙証基準が妥当する。Bene v. Jeantet (1889)

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(*1) Chief Judge Rader Speak in NY TIMES (2014-06-04) “Make Patent Trolls Pay in Court

 

 

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 (*2) H.R. 3309