101条に対するPublic Commentに基づく特許庁の報告書     

USPTO Issued Patent Eligibility Subject Matter Report and Recommendations from the Public

Published July, 2017

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Summarized and Commented by Tatsuo YABE -

August 3, 2017  

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USPTO20161017日公開のFederal Register(官報)で述べたように101条判断(特許保護適格性)に関する先般の4件の最高裁判決(Bilski; Mayo; Myriad; Alice)及び特許庁の審査ガイダンスに対するRoundtableディスカッション(2016-11-14 & 2016-12-5)を実施するとともに関係者(団体及び個人)に意見及び改善提案を求めた。昨年、実施されたRoundtableディスカッション及び公共に意見(関係者によるパブコメ)を集約し、報告書を作成し公開した。

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50枚を超える報告書ではあるが、内容は特許保護適格性の歴史(立法及び司法)、IP5での対応に加えて、Roundtableディスカッションでの意見及び関係者からの意見及び提案事項のまとめに終わった。これら集積した意見を基にUSPTO101条審査を今後どのように充実させていくかということに関しては触れていない。

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しかし、PTOが抽出した公共からの推奨事項の中で頻出するキーワードは技術課題に対する技術解決手段(technical solution to a technical problem:日本及び欧州での対応と類似)と有益性(useful)である。即ち、これら用語が101条の特許保護適格性に対する判断基準として最高裁判決後(2014年のAlice以降)のCAFC判決において良く用いられているということと、そもそも101条の条文においてusefulという用語が使用されていることである。今回の報告書を読む限りにおいてUSPTO101条判断基準に対し過去に出した審査ガイダンスの内容を大きく変更するとは考え難い。然るに出願実務者としては101条拒絶に対してはクレームされた発明はa technical problemに対しa technical solutionを提供する、或いは、a tangible and useful resultを現出するという結論に結び付けられるように反論するのが妥当と思料する。

 

Summary of Public Views on Patent Eligible Subject Matter

公共の意見として先般の最高裁判決(特にAlice 2パートテスト)に賛同する意見と反対意見に分かれ、

[1] Views Supporting the Supreme Court’s Decisions

賛同意見としては、Alice 2パートテストは過度に広い権利範囲を持つクレームの権利化を抑制できる、ソフト関連、電子コマース関連のクオリティーの低い特許の成立を抑制できる、結果のみを規定したるクレームの権利化を抑制できる、侵害訴訟においても早期段階で訴訟却下の申し立てで無効化のカードとして使用できる、及び、トロール対策にも有効活用できる点を述べている。 

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[2] Views Critical against the Supreme Court’s Decisions

反対意見としてはMayo/Alice最高裁判決は101条の立法趣旨に反し、そもそも合衆国憲法に鑑み違憲(科学の発展を促進するために立法できるという憲法で保証された連邦議会の権限に制限を加えることになる)である、1952年の101条立法に至る趣旨(議事録)で意図されていた広範な保護適格性に反する、Alice 2パートテストは絶望的に主観的(hopelessly subjective)で活用不可能であり、Alice 2パートテストはNegativeテスト(例:抽象的アイデアを対象とするものではないことを挙証する)であり出願審査段階及び権利行使段階において予測不能となる、「抽象的なアイデア」及び「顕著に超える」というAlice 2パートテストを適用する上で重要な用語が明確に規定されていない、Alice 2パートテストは審査官にとって信頼性のある101条判断をするうえで活用不能なフレームワークである、Alice 2パートテストによる101条判断は特許性の他の条文102条と103条と不可思議に融合している点(inventive concept等を言及している)、広範すぎるクレームの権利化は102条、103条、及び、112条によって対応されること、特に112条の開示要件、実施可能要件、及び、クレームの明瞭性の要件によって広すぎるクレームは拒絶される、健全な特許システムを構築しないと米国経済に負の影響をもたらす、発明者に対する発明意欲を削ぐ、特許保護を求めるよりも企業秘密による保護を求めることになり、公共に対する利益(特許公開で公共が受ける利益)が低下する、国際的な視野に立つと諸外国で保護が得られる発明が米国では保護が得られなくなり米国市場の魅力が低減する、国際特許出願のように統一した明細書が米国では機能しなくなる等がある。

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さらに、最高裁判決の影響が最も顕著であった生命科学とコンピューター関連技術のグループからはそれぞれ反対意見が述べられ、生命科学技術のグループからは特にMyriad判決(単離したDNAは保護適格性無し)とMayo判決(個人向けの投与量を決定するステップは保護適格性無し)によってビジネスが阻害されている点、コンピューター関連業界からは特にAlice判決によるビジネスの弊害を述べている。

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Public Recommendations:

さらに、公共からの推奨事項(提案)として司法、行政、立法府に対し建設的な意見が幾つか挙げられた。

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[1] Allow Judicial Developments to Continue

1番目は今後の司法判断によって判例法が蓄積され保護適格性判断に対する基準がやがて明瞭となると予想されるので今後の司法判断をWatchしようという意見である。2007年のKSR事件(自明性の判断)は103条判断(自明性判断)を混乱させたが、その後のCAFC判決によって妥当な判断基準(判例法による判断基準)が設立されてきた。事実、昨今のCAFC判決(Enfish判決Rapid Litigation判決等)によって適格性を有する発明とそうでないものとの差異を徐々に明瞭にしてきている。CAFCは技術課題とその技術解決アプローチ(Technical Problem / Technical Solution Approach)で、保護適格性と非適格性との間を判断しているようであり、このような判例法による判断基準は101条判断を明瞭にしている。このような動きが判例法を採用する米国の法体制である。

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[2] Take Administrative Measures

2番目は行政に働きかけを要請しており、例えば101条拒絶に対する出願人の反論に対して説得性がないというのみではなくきっちりと説明することを希望している。さらに、101条審査ガイドラインをより充実させる(より充実した説明とより豊富な例題を盛り込む)ことを希望している。さらに審査便覧(MPEP)においてAlice判決による影響を説明することを希望する。昨今のCAFC判決において101条判断において用いられる「技術課題に対する技術解決手段(a technical solution to a technical problem)」というフレーズの意味合いを明確化することを希望している。

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[3] Push for Legislative Reform

3番目としては立法府に要請をしている。要は101条(特許保護適格性)の条文の改訂を求めている、Alice 2パートテストの適格性判断基準を廃し、技術的または有益性の要件(technological or useful arts requirement)を条文に入れること、技術発明(技術分野に貢献する発明: inventions contributing to the technical arts)には保護適格性があること条文化する、現101条の条文のNewを省き、Useful要件のみ残す、現実的に有益(practically useful)でない主題は適格性がないというような条文とする、或いは、保護適格ではないものを規定する、例えば、人の活動とは独立し、当該活動以前に自然に存在する主題或いは人の精神活動によってのみ実施しうる場合にのみ保護適格性はないと規定する、さらには101条と他の特許性の条文102条、103条、112条を明瞭に分離するような条文、究極には101条の条文を廃止することを提案している。

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