■ S515改、上院司法委員会 特許法改正法案提示 -- 2010年3月4日

 

 

Bush政権で合意に至ったS515の内容とよく似ている。 基本的に以下の内容が盛り込まれている:

 

(1) 102条:    先発明主義から先願主義への移行(但し、発明者による公開後1年のグレースピリオド残す);

(2) 103条:    自明性;

(3) 115条:    発明者の宣誓書;

(4) 118条:    発明者以外による出願;

(5) 123条:    マイクロエンティティに関する条文;

(6) 284条:    損害賠償;

     154条(d)項:    故意侵害の判断基準を「客観的に無謀な行為」と条文で規定する;

(7) 135条:    旧インターフェランスを廃止し、真の発明者を争う条文;

(8) 特許付与後の再審理(無効手続き)の手続きを整備する;

(9) 282条(b)項:    ベストモード要件を特許法条文に残すものの、無効理由とはしない;

(10) 28 U.S.C. 1400:    裁判地の移送を「明白により妥当な裁判地が存在する」という基準で可能とする;

(11) 292条:    特許虚偽表示を理由とする訴訟当事者適格性を規定する;

(12) 41条、376条:    PTOの裁量権に関する規定。

 

上記内容を盛り込んだS515(改訂)法案は上院の合意を得ることはできるとしても(今春)、House of Representative(下院)の合意を得られるか否かは現時点では予想は困難である。 拠って、今年度中に法案が可決されるか否かは定かではない。 今後も継続的にWatching要である。

 

 

 Tatsuo YABE

  March 14, 2010

 

   

 

 

S515改、上院司法委員会 特許法改正法案提示 -- 2010年3月4日

 

 

基本的に以下の内容が盛り込まれている:

 

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(1) 102条:    先発明主義から先願主義への移行(但し、発明者による公開後1年のグレースピリオド残す);

前回のS515と基本的に同じ内容。

 

(2) 103条:    自明性;

前回のS515と基本的に同じ内容。

 

(3) 115条:    発明者の宣誓書;

前回のS515と基本的に同じ内容。

 

(4) 118条:    発明者以外による出願;

前回のS515と基本的に同じ内容。

 

(5) 123条:    マイクロエンティティに関する条文;

前回のS515と基本的に同じ内容。

 

(6) 284条:    損害賠償;

基本的に、前回のS515と同じ内容。

 

(以下若干変更)

154条(d)項:    故意侵害の判断基準を「客観的に無謀な行為」と条文で規定する

In re Seagate Tech (Fed Cir 2007)の判示に基づき「客観的に無謀な行為」に対して故意侵害を認めると条文に規定する。 今回のS515においては、さらに「故意侵害の認定」基準を厳しくしており、(i) 故意侵害は特許の有効性と侵害の判断が終わってから審理し、(ii) 故意侵害を立証するには、警告書(侵害行為を止めるように要求するデマンドレター)のみでは不十分であり、問題となるクレームとイ号との対比が明白にされている必要がある。

 

(7) 135条:    旧インターフェランスを廃止し、真の発明者を争う条文;

前回のS515と基本的に同じ内容。

 

(8) 特許付与後の再審理(無効手続き)の手続きを整備する;

 

    321条 〜329条   付与後異議申し立て(無効申請手続き) : 登録後9ヶ月以内に可能

    311条〜319条   当事者系再審査手続き: 登録後9ヶ月以降に可能

    122条    査定系再審査手続き

    257条:    「補助的審査制度」の構築: (不公正行為になりうる行為を治癒可能)

      

前回提示されたS515法案と基本的に同じであるが、ひとつ(以下第4の手法: Supplemental Examination)追加されている。

 

特許付与後に以下の4つの手法で特許の有効性に対し反論可能である:

 

第1の手法は、権利付与後9ヶ月以内であれば特許無効理由(新規性、進歩性、記載要件)を基礎とし特許クレームの無効性に疑義を提起できる。 PTOは特別の理由のない場合には3人の合議体(Administration Patent Judges: APJs)によって12ヶ月以内に審理を終了しなけばならない。 申立人は利害関係者のみ、登録後9ヶ月以内 、少なくともひとつのクレームが「more likely than not」の基準で特許性がないことを示す。

    

第2の手法は現行の当事者系再審査であり、今回の法案においては1999年以前に付与された特許に対しても当事者系再審査をできるようにしている。 但し、現行法と同じく当事者系再審査においては無効理由は新規性、進歩性に対して刊行物のみで疑義を提起しなければならない。申請人は利害関係者のみ、登録後9ヶ月以降に可能、少なくともひとつのクレームが「reasonable likelihood」の基準で特許性がないことを示す

 

第3の手法は現行法の基で実施されている査定系再審査制度であり、基本的に現行法のままである。 現行法と同じく査定系再審査においても、当事者系再審査と同様、無効理由は新規性、進歩性に対して刊行物のみで疑義を提起しなければならない。

 

第4の手法は、今回新たに追加されたもので、特に不公正行為(IDS開示要件違反など)を治癒できる機会を特許権者に与えるもので、特許権者は「追加審査: supplemental examination」を提起することができる。

 

(9) 282条(b)項:     ベストモード要件を特許法条文に残すものの、無効理由とはしない;

 

(10) 28 U.S.C. 1400:    裁判地の移送を「明白により妥当な裁判地が存在する」という基準で可能とする;

 

In re TS Tech USA Corp (Fed Cir 2008)の判示に基づき、裁判地の移送を判断する際に、"clearly more convenient (明白により妥当な裁判地が存在する)"という基準を採用する。

 

(11) 292条:    特許虚偽表示を理由とする訴訟当事者適格性を規定する;

 

今回のS515では現行特許法292条の訴訟当事者適格性の要件を厳しくしており、特許の虚偽表示により競合関係における損害を被った者だけが当事者適格性を満たすとしている。 拠って、法案が成立すると、虚偽表示に関る最近の判決、Forest Group v. Bon Tool Co (Fed Cir 2009)で一般的になった刑事的民事訴訟(私人により制裁金を取り立てる訴訟を提起するも、取り立てた一部を国家に還すという訴訟)は廃止される。

 

(12) PTOの裁量権に関する規定

 

前回のS515と基本的に同じ内容。

 

 

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上記内容を盛り込んだS515(改訂)法案は上院の合意を得ることはできるとしても(今春)、House of Representative(下院)の合意を得られるか否かは現時点では予想は困難である。 拠って、今年度中に法案が可決されるか否かは定かではない。 今後も継続的にWatching要である。

 

 

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