Biosig v. Nautilus

 Fed. Cir. Decision [2013/04/26]

 

最高裁で審理決定

2014110

 

Summarized by Tatsuo YABE

January 19, 2014

  

 

2014110日、合衆国最高裁は2つの特許事件に対して上告を認める判断をくだした。 一つはLimelight v. Akamai事件(方法クレームのステップの実行者が複数の場合、当該方法クレームに対する誘因侵害271条b項の成立要件は?)であり、もう一つが本事件(Biosig v. Nautilus)である。 即ち、クレームの明瞭性(112条第2項)が争点である。 周知されているように、2007年に最高裁は103条(自明性)の判断基準に対するKSR判決を下し、2010年以降は特に101条(特許適格性)に関する大きな判決、Bilski判決(2010)、Prometheus判決(2012)が続いた。 さらに、2013126日には101条に関するCLS Bank事件の上告を認めた。 本事件は112条第2項のクレームの明瞭性が争点である。 最高裁が112条第2項に対応する要件に対して前回判決を下したのは1942年の United Carbon v. Binney & Smith事件である。 実に70年以上の月日を経て寝た子を起こすことになる。

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最高裁での争点は:

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Does the Federal Circuits acceptance of ambiguous patent claims with multiple reasonable interpretations so long as the ambiguity is not insoluble by a court defeat the statutory requirement of particular and distinct patent claiming?  Does the presumption of validity dilute the requirement of particular and distinct patent claiming? 連邦巡回区控訴裁判所の判断、「クレームに対する合理的な解釈が単一ではなく複数あるとしても、その不明瞭の度合いが解消不能というレベルではない限りは、112条第2項のクレームの要件を満たす」は正しいか? 成立した米国特許に対する「有効性の推定(282)」は112条第2項の要件を希薄にするか(112条第2項に基づく無効の挙証責任を上げるか)?

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最高裁が関与するとその多くの場合、CAFCでの法理がより複雑化する。 2002年のFest判決においてもCAFCの法理「complete bar(特許性に関わる理由で減縮補正された構成要素には均等論は適用されない)」に3つの例外を判示した。 2007年のKST事件においてもCAFCの法理(「TSMの不存在時には先行技術文献を組み合わせて自明と判断するべきではない」)を否定し、自明(103条)と判断できる場合の多くの例示を伴い判示した。 101条に関する最高裁の関与(Bilski判決, Prometheus判決)は最たるもので、CLS Bank事件(2013年CAFC大法廷判決)は多数意見がでずに混乱を極めたというのは顕著な例である。 この混乱を極めたCLS Bank事件を最高裁がレビューすることを決定(2013126)したので、最高裁がどのように修復できるか(101条に対する少しでも明白な判決を出せるか)が今年の注目点のひとつである。 

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本件においては101条に対する判決ほど最高裁が混乱をもたらすことはないと考えるが要Watchである。

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以下本事件のCAFC判決(2013/04/26)の概要:

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判決文

特許権者: Biosig Instruments,Inc. (Biosig) 

被疑侵害者: Nautilus,Inc. (Nautilus)

問題となった特許: US 5,337,753 (753特許)

CAFC判事: Newman判事、Wallach判事(多数意見)、Schall判事

concurring opinion(*1): Shall判事)

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連邦巡回区控訴裁判所は、112条第2項を満たさないという理由で特許(USP5337753: US753特許と称する)を無効とした地裁判決を破棄・差し戻しとした。 問題となった特許はBiosig社の心拍数を検出するモニターに関する技術で、以下図7で示すようなエクササイズ用のバイクのグリップなどに取り付けられる。 753特許における発明の本質部分は、運動中のユーザーの心拍数をモニターする際に心臓の鼓動から検出されるECC信号に加えて筋肉の運動より生じるEMG信号があり、このEMG信号がECC信号の検出精度を阻害するノイズとなり、当該ノイズをキャンセルするべくユーザーがグリップするハンドルの部分に2つの電極、{活性電極(active electrode)と共通電極(common electrode)}を所定間隔あけて設置したということである。 この所定間隔あけたという特徴をクレーム1(*2)では地裁では、「in spaced relationship」という文言で表現されており、このspaced relationshipが当業者にとってどの程度なのかを示せないとして地裁において不明瞭(112条第2項違反)と判断(略式判決)された。

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控訴審(CFAC)は、上記地裁判決を破棄・差し戻しとした。 その理由は、抜粋すると以下の通り:

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(1) クレームはそれがクレーム解釈に適合できない、或いは、解消不能なほどに不明瞭である。 Datamize, LLCv. Plumtree Software (Fed Cir. 2005) 問題となる用語 spaced relationship“はクレーム解釈に適合する。 当該用語の不明瞭を主張する側は、当業者にとって当該用語が解消不能なレベルに不明瞭であることを証明しなければならない。 地裁判決にあるように、明細書のなかにもspaced relationshipが何インチかは開示されていない、しかし、問題となる間隔は人の手の幅より狭く、活性電極9(13)とコモン電極11(15)が実質的に融合してしまうほど狭くはないということが理解できる。

 

クレームを解釈するために妥当な努力を支払っても当業者がクレームの境界性(権利の幅)を十分に特定あるいは明確化できない場合には、クレームは解消不能に不明瞭であり、112条第2項の要件を満たさないとして無効と判断されるであろう。 Star Scientific Inc. v. R.J. Reynolds Tobacco Co., (Fed Cir. 2008)

 

一般原則として、クレーム解釈をするときには内部証拠を主に参酌する。 Enzo Biochem. Inc. v. Applera Corp. (Fed Cir. 2010) クレーム解釈と同様に、クレームの明瞭性を判断するために外部証拠を利用しても良い。 Cybor Corp. v. FAS Techs. Inc. (Fed. Cir. 1998)

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(2) クレームのwhereby句(クローズ)(*3)によってEMG信号を実質的に除去する機能が規定されており、再審査においても本願特許発明が先行技術と識別された重要な特徴である。 然るに、この特許性の理由となった重要な機能は、活性電極とコモン電極とのspaced relationship(間隔)を明瞭化するためにも重要である。 クレームの特定の用語を解釈するために発明の機能を考慮にいれることは全く正しいことである。 Medrad, Inc., v. MRI Devices Corp (Fed Cir. 2005)

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(3) その他:

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Halliburton判決(Halliburton Energy Servs. Inc. v. M-I LLC Fed. Cir. 2008

Halliburton判決においては ドリル作業に使用される“fragile gel”という用語が問題となった。 本法廷(Fed Cir)において、この用語によって発明が先行技術とどのように識別されるかが(応力が掛かった場合にどれだけ早くジェルが脆弱となり、応力が除去されたときにどれだけ早くジェルの機能を復旧できるかが)理解できないと判断し、クレームは不明瞭で無効とした。

 

本事件はHalliburton事件とは識別される。 本事件で問題となっているクレーム用語 spaced relationshipはユーザーの掌(手のひら)より狭いということが本来備わっており、且つ、当業者であれば通常のテスト機器を用いて当該間隔(spaced relationship)を見つけだすことができる。 拠って、Nautilusの主張(753特許の無効理由)の根拠とするHalliburton事件は本事件には適用されない。 

 

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Star Scientic II判決 (Star Scientific, Inc. v. R.J Reynolds Tobacco Co. Fed. Cir. 2011)

本事件は寧ろStar II判決と同類である。 Star事件において問題となったのは controlled environmentという用語であり、たばこの葉を乾燥させることを業とする当業者にとってクレームされた方法を実行するのに controlled environmentを提供できるかということが争点となった。 本法廷(Fed Cir)において、問題となった特許の明細書で湿度、温度、風量が開示されていなかったことは決定要因ではないと判断した。 本法廷において当業者であればこれらパラメーターを駆使し制御された空間を作り出せることを示す証拠を見つけたので、controlled environmentという用語は解消不能に不明瞭とは判断しなかった。 Star事件と同様に、本事件においても当業者であれば、間隔、サイズ、形状、よび、材料というパラメーターを駆使しクレームで規定されている spaced relationshipを見出すことができるであろう。

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Concurring Opinion by Judge Shall:

上記多数意見の(2)でWhereby句(クローズ)で規定された発明の「機能」を考慮にいれてクレームの文言である「間隔(spaced relationship)」の明白性を論じているが、そのような考察は本事件の争点ではなく、必要ないと考える。

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(*1) 
Concurring opinion:
 補足意見(多数意見と結論は同じであるが、推論過程が異なる) 

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(*2) 
Claim 1 is representative and recites, in relevant part: 
1. A heart rate monitor for use by a user in association with exercise apparatus and/or exercise procedures, comprising: 
an elongate member; 
electronic circuitry including a difference amplifier having a first input terminal of a first polarity and a second input terminal of a second polarity opposite to said first polarity; 
said elongate member comprising a first half and a second half; 
a first live electrode and a first common electrode mounted on said first half in spaced relationship with each other; 
a second live electrode and a second common electrode mounted on said second half in spaced relationship with each other; 
said first and second common electrodes being connected to each other and to a point of common potential . . . . 

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(*3) 
whereby, a first electromyogram signal will be detected between said first live electrode and said first common electrode, and a second electromyogram signal, of substantially equal magnitude and phase to said first electromyogram signal will be detected between said second live electrode and said second common electrode; so that, when said first electromyogram signal is applied to said first terminal and said second electromyogram signal is applied to said second terminal, the first and second electromyogram signals will be subtracted from each other to produce a substantially zero electromyogram signal at the output of said difference amplifier . . .

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