合衆国最高裁判決

WesternGeco LLC v. Ion Geophysical Corp.

20180622

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7:2271(f)(2)の侵害においてもLost foreign Profit認める。

OPINION by Justice THOMAS

Summarized by Tatsuo YABE – 2018-06-29

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2018622日、米国特許法第271(f)(2)に基づく侵害行為に起因する外国での遺失利益(Lost foreign Profits)を284条で規定する損害賠償額の基礎となるかに関して最高裁の判決が出た。7:2の多数意見で諸外国におけるLost Profits284条の損害賠償の基礎となると判示した。271(f)(2)による侵害とは、第3者が米国内で特許に関わるパーツ(汎用品ではない)を製造し、それらパーツが諸外国で組み付けられることを意図し諸外国に輸出し、当該組み付け行為によって特許クレームの構成要素を満たす場合を侵害とする規定である。WesternGecoIon271(f)(2)項による侵害行為によって本来取れるべき10件の契約が取れなかった(遺失利益)と主張し284条の基に損害賠償を求めた。Ionは諸外国での契約行為(遺失利益の対象)には284条は適用されないと反論したが地裁では認められなかった(即ち、WesternGecoに遺失利益を認めた)。然しCAFCは地裁判決を破棄し(284条の法域外であると判断)、今回最高裁が上告を認めCAFCの判決を破棄差し戻した(即ち、地裁判決を支持)。

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事件の背景:

特許権者:WesternGeco

問題となった特許:USP7,293,520; USP7,162,967; USP 7,080,607; USP 6,691,038

海底面の3Dマップを生成し天然資源を探索する位置決定システムに関する。

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2007年以降、IONWesternGecoと競合するシステムの販売を開始した。IONは同競合するシステムの構成部材を米国で製造し、外国に輸出し、当該外国において組み付けられてWesternGecoの特許クレームで規定したシステムに組み付けられた(即ち、米国においては部品の状態でWesternGecoのクレームを侵害しないが、輸出先の外国の会社で部品が組み付けられ特許クレームの構成要素を満たす)。IONの行為は米国特許法271(f)項に基づく侵害であり、IONの行為によってWesternGecoは本来獲得しえた10件の契約を遺失したと主張し、当該遺失利益に対し284条に基づき損害賠償を求めた。

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地裁においてWesternGeco12.5Millionのロイヤルティーと遺失利益に対して93.4Millionの損害賠償額の支払いを命じた。 ION271(f)項侵害に対し遺失利益に基づく損害賠償の算定は不当であるとしCAFCに控訴した。CAFC271(f)項に基づく侵害行為による遺失利益は米国法の適用外(extraterritorially)であるとし、地裁判決を破棄した。CAFCの判決を不服としWesternGecoは裁量上告し、今回最高裁が本事件を取り上げた。

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最高裁多数意見の概要:

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271条(f)項の侵害行為は2種類あり、271(f)(1)は米国から外国に特許クレームに関して本質的な構成物(substantial portion of the components of a patented invention)を輸出し諸外国にて組み付けられて特許侵害品を構成する場合に対する侵害行為を規定しており、271(f)(2)項では特許を侵害する以外には使用価値のない部材を海外に輸出し、外国にて組み付けられて特許侵害を構成する行為を侵害と規定している。

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本事案の場合にはIONの行為は271(f)(2)の侵害行為に該当する。CAFCは合衆国の連邦法は合衆国の法的管轄域においてのみ適用されると推定している。この法理は法域以外には法を適用しないとする推定(「法域外の推定」:presumption against extraterritoriality)と呼称され、根が実に深いものである。この推定は一般常識で理解されるように米国連邦議会は米国内で適用される法律を立法するということに基礎をおくものだ。しかし最高裁は法の適応域であるか否かを判断するのに2つのステップを設定した。第1のステップで結論を出すのは難易度が高いので同じ結論に至るため第2のステップで判断することとする。

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2ステップで判断する場合には条文のフォーカスする部分(条文の要たる部分)を特定することが重要である。即ち、条文が叶えたい目的は何か(法律が統制したい行為は何か?当事者が求める法的利益とは何か?)を考察することで条文の要を知ることになる。依って、条文の要に関わる行為が米国内で起こるのであれば、本事案は法域内である(米国法で裁く)。

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問題となる条文の要を理解する上で、単に条文を眺めるのではなく、当該条文と関連して発動される条文があればその条文と共に解釈することが妥当する。損害賠償に関して284条があり当該条文が271条と関連して発動される。284条は侵害行為に対して特許権者に適切な損害賠償を与えることを規定している。依って、284条の要は「侵害行為」である。当該条文が問題とするのは特許権者が侵害によってどれだけの不利益を被ったかである。

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271(f)(2)は米国外で組み付けられて特許クレームを構成されることを意図して米国内に部品を提供し、或いは、米国から外国に輸出する行為を侵害であると規定している。このように271(f)(2)がフォーカスする(要とする)のは米国内に提供或いは米国から提供するという米国内で起こる行為である。実に下級審(CAFC)においても271(f)(2)は、第3者(権利者以外の者)が米国から輸出する行為に対して特許権を適用させるための条文であると述べている。要約すると271(f)(2)は米国から特許の構成部材を諸外国に輸出する行為に対する侵害を規定しているのである。即ち、当該条文が配慮する行為とは米国内の行為である。

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従って、271(f)(2)項の侵害によって生じた遺失利益は284条の基にWesternGacoに支払われるべきである。

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271(f)(2)284条を解釈すると、特許権者は外国での遺失利益を回復することができる。 284条に基づく損害賠償額は、侵害行為が発生しなかった状態に特許権者の利益を補償する場合に適切と理解される。General Motors Corp. v. Devex Corp., US (1983) 言い換えると、特許権者は侵害行為が起こった場合と侵害行為が発生しなかった場合との金銭的な差額を回復する権利を有する。Aro Mfg. Co. v. Convertible Top Replacement Co. US (1964) 損失の回復とは遺失利益を含む。Yale Lock Mfg. Co. v. Sargent U.S. (1886)

本事件において遺失利益とは271(f)(2)項の侵害により発生した諸外国における遺失利益も含まれる。

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依って、CAFCの判決を破棄差し戻しとする。

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References:

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35 U.S.C. § 271 - Infringement of patent

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(f)(1)

Whoever without authority supplies or causes to be supplied in or from the United States all or a substantial portion of the components of a patented invention, where such components are uncombined in whole or in part, in such manner as to actively induce the combination of such components outside of the United States in a manner that would infringe the patent if such combination occurred within the United States, shall be liable as an infringer.

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(f)(2)

Whoever without authority supplies or causes to be supplied in or from the United States any component of a patented invention that is especially made or especially adapted for use in the invention and not a staple article or commodity of commerce suitable for substantial noninfringing use, where such component is uncombined in whole or in part, knowing that such component is so made or adapted and intending that such component will be combined outside of the United States in a manner that would infringe the patent if such combination occurred within the United States, shall be liable as an infringer.

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35 U.S.C. § 284 Damages. 
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Upon finding for the claimant the court shall award the claimant damages adequate to compensate for the infringement but in no event less than a reasonable royalty for the use made of the invention by the infringer, together with interest and costs as fixed by the court. 
When the damages are not found by a jury, the court shall assess them. In either event the court may increase the damages up to three times the amount found or assessed. Increased damages under this paragraph shall not apply to provisional rights under section 154(d). 
The court may receive expert testimony as an aid to the determination of damages or of what royalty would be reasonable under the circumstances.
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