Information Disclosure Statement に関する基礎知識:

 

米国特許出願業務に携わる者はIDSに関して中途半端な対応はできません。 ところが過去の業務手順の延長線上でIDS対応を継続している機雷がなきにしもあらずです。 そこでIDSに関する最低限必要な情報を米国施行規則と審査便覧の中から抽出し、著者自身の整理のためも含めて、ここにまとめることとしました。企業特許課或は事務所で米国特許出願業務の基礎を学習されている方の一助になれば幸いです。 尚、以下の情報は施行規則及び審査便覧の情報を加工したもので米国特許弁護士のテクニック或はアドバイスを含むものではありません。

 

Feb. 26, 2000

By Tatsuo YABE

 

Table of Contents:

 

■ 何故IDSをする必要があるのか?

■ 誰がIDS開示義務があるのか?

■ 誰に対してIDSを提出する義務があるのか?

■ 上記(a), (c) IDS開示義務を満たす簡単な方法はないか?

■ どのようなタイミングでIDSを提出すれば審査官に考慮されて有効な特許が取得できるのか?

■ いつまでIDSをする義務があるのか?

■ どのようなものがIDS提出義務の対象となるのか?

■どのようなものはIDSする必要がないのか?

■ 37 CFR 1.56(a) “ information material to patentability”とは何を意味するのか?

■ IDSに何を記載すればIDS開示義務を満たすのか?

■ Non-English-Language情報をIDSするときに 37 CFR 1.98 a-(3)で言う “a concise explanation”を満たすのにはどの部分をどのように説明すれば良いのか? 

■その他

■ 関連米国特許施行規則及びMPEP

 

 

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■ 何故IDSをする必要があるのか?

 

米国特許出願をするときは、発明者が以下の要件に対して宣誓をする宣誓書37 CFR 1.63に署名しなければならない。

(1) 明細書(クレームを含む)の内容を検討し、理解している。

(2) 真実であり、最初の発明者であると信じる;

(3) 規則1.56に定義している特許性に重要と思える情報を特許庁に開示する義務を認識している;

 

一旦、宣誓書で以上のことを宣誓し、署名すると上記の何れかを違反した場合には特許権を得られなくなる。

 

■ 誰がIDS開示義務があるのか?

MPEP 2001.01 (37CFR1.56c)

 

(a) 発明者

(b) 代理人(米国特許弁護士或いは米国特許代理人)

(c) 当該出願の実質業務に関わる全ての人

 

■ 誰に対してIDSを提出する義務があるのか?

MPEP 2001.03

 

USPTO(米国特許商標庁)

 

■ 上記(a), (c) IDS開示義務を満たす簡単な方法はないか?

37 CFR 1.56(d)

上記(c)の人は(a)或いは(b)に、(a)の人は(b)IDSを開示することで開示義務を満たす。

 

■どのようなタイミングでIDSを提出すれば審査官に考慮されて有効な特許が取得できるのか?

MPEP609 B Timing for filing

37 CFR 1.97(b), (c),(d)

Statements 1.97(e)(1) & (e)(2)

 

                                                                 

f/date        (1st stage)             (2nd stage)              (3rd stage)            (4th stage)  Patent Granted                 

|------------------------|---------------------------|----------------------|----------------|

 

 

1st stage:     filing date through 1st OA or 3months whichever is later;

2nd stage:     after 1at stage through Final OA (or Notice of Allowance);

3rd stage:     after 2nd stage through Payment of Issue Fee; and

4th stage:     after Payment of Issue Fee through Patent Granted.

 

What is Needed for submitting an IDS:

 

In 1st stage:       IDS only

In 2nd stage:      IDS + Statement or (statement を書けないときは※1) IDS + Fee

In 3rd stage:       IDS + petition + Fee + Statement(※1)

In 4th stage:       IDS Only placed in a file.(審査官に検討してもらいたければCPAが必要)

 

(※1)Statement: IDS使用とする情報がIDSをする日の3ヶ月以内に知ったものである。(言いかえるとIDSするべき情報を入手し、3ヶ月以上経過していれば本セクションでいうstatementを書くことは出来ない。)

 

■ いつまでIDSをする義務があるのか?

 

特許出願が放棄されるか(see MPEP2001.04)米国特許が発行されるまで(see 37CFR1.97(i))IDS開示義務がある。

 

注意:特許発行後の再審査においては特許保有者がIDS開示義務を負う。(MPEP2014 & 37CFR1.555)

 

■ どのようなものがIDS提出義務の対象となるのか?

37 CFR1.56(b) MPEP2001.04

 

特許性に関わる重要なもの(Information material to patentability)IDSしなければならない。

―提出するべき情報の種類:

(a) 特許公報或いは刊行物

(b) 先使用、販売、他人による先発明、発明者の不一致、他より得た内容に関する情報

 

■どのようなものはIDSする必要がないのか?

MPEP2001.05

 

特許性に関わる重要なものではないもの(上記 “information material to patentability”ではないもの)。

例:(MPEP2001.04)

特許性に有効な情報

発明物に関わる商業上の成功

当業者が自明とするレベルに関する情報

 

■ 37 CFR 1.56(a) “ information material to patentability”とは何を意味するのか?

37 CFR1.56(b) (1),(2)

 

既に提出された情報或いは、既に記録された情報に重複しないもので、その情報が、

(1)それ単体で或いは他の情報と組合せると a prima facie case of unpatentability(一見したところ特許不可)”となる場合;

(2)出願人が(i)PTOの特許不可理由に反論する或いは(ii)特許性を主張することに、逆らう或いは矛盾する場合。

 

prima facie case of unpatentability ⇒ 37 CFR1.56(b) (ii)以下を参照ください。

 

■ IDSに何を記載すればIDS開示義務を満たすのか?

(see 37 CFR 1.98 (a) (1), (2), (3) & MPEP609)

 

(1) IDSする特許公報、刊行物、その他提出する情報のリスト;

(2) 上記(1)のコピー;

(3) 英語以外の情報に対しては1.56cの人が周知する、その情報の内容に対するコンサイスな説明(“a concise explanation of the relevance”)

 

■ Non-English-Language情報をIDSするときに 37 CFR 1.98 a-(3)で言う “a concise explanation”を満たすのにはどの部分をどのように説明すれば良いのか? 

MPEP609(A3)

 

英文Abstractを提出する;

EP(米国以外の特許庁)のサーチレポート(英語)の場合には、X,Yなど標記があればサーチレポート自身を提出する;

JP(米国以外の特許庁)の特許局通知の場合にはOAの英語訳;

対応英語出願がある場合にはそれの公開公報を提出する。

 

不完全な例:A,B,Cの引例が特許庁で引用されたとのみIDSに記載すること。

 

(注意:上記事項はMPEP609(A3)に記載されていますが、上記項目を提出すればIDS開示義務の「a concise explanationの要求」を何時如何なる時も100%満足し、後に被疑侵害者が最も関連する部位を隠匿する意図でそれを実行したと主張する反論に100%有効になる補償はありません。 それを避けるために単純に安全サイドを考慮するならば、英語以外の情報をIDS提出するときはその情報の全英訳ということになりますが、そのような手法は勿論現実の業務に多大な支障を来すことになるので推奨できるものではありません。 従って、「a concise explanationの要求」を実務レベルで妥当に満たす適切な処置をさらに検討します。適切な対処方をご存知の方はアドバイスして頂ければ大変光栄です。 Mail to: yabz@bekkoame.ne.jp

 

■その他

IDS提出期限の延長不可(37CFR1.97(f))

IDSを提出することは先行技術のサーチをしたとは解釈されない(37CFR1.97(g))

IDSした情報は出願人が特許性に関わる重要なものと判断していることにはならない (37CFR1.97(h))

 

■ 関連米国特許施行規則及びMPEP

 

37 CFR 1.63: Oath or declaration;

37 CFR 1.56: Duty to disclose information material to patentability;

37 CFR 1.97: Filing of information disclosure statement;

37 CFR 1.98: Content of information disclosure statement;

MPEP609;

MPEP 609 (A3);

MPEP609 B Timing for filing;

MPEP2001.01;

MPEP2001.03;

MPEP2001.04;

MPEP2001.05;

MPEP2014;

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