CBT Flint Partners, LLC, v. Return Path and Cisco Ironport Systems

 

CAFC August 10, 2011

 侵害裁判において地裁で訂正可能なクレーム用語のエラーのレベル

Summarized by Tatsuo YABE

August 15, 2011

 

本CAFC判決は、クレーム用語に誤記がある場合に侵害裁判において地裁がクレーム解釈時にどの程度の誤記を訂正可能かに対する判断基準の一つを示すものである。 問題となったクレーム13の用語、detect analyze(動詞が接続詞無しで2つ繋がっている)という用語は同構成要件の後で、to determine whether or not …is authorized sending partyと続くので(1) detect (deleting ‘analyze’); (2) analyze (deleting ‘detect’); (3) detect and analyze (adding ‘and’ in between)という何れの訂正を行ったところで、結果としてクレーム解釈に実質的な影響を与えないという判断がなされた。 また、図面或いは明細書にdetect and analyzeという用語、そのものずばりの文言のサポートはなかったがそれぞれの動詞をサポートする下位概念のサポート(detectに対して‘decode’analyzeに対して‘compare’)が図面と明細書に存在したことが地裁で訂正できるエラーとして判断された理由である。

 

米国特許出願においては、クレーム用語と同一の文言のサポートが明細書にあることが望ましいが、クレーム用語をサポートする実施例における下位概念の用語が存在することでもある程度のクレーム用語エラーの訂正の根拠になる。

 

しかし、本事件ではCAFCで地裁判決(問題となった用語は訂正できない)が破棄された故にクレーム13の無効は免れたが、本CAFC判決に至るまでに(数千万円以上の弁護士費用と時間を費やする前に)、特許権者はCertificate of Correction或いはReissue Applicationで問題となる用語を訂正しておくべきであったと思料する。 そもそもは権利行使をする前に(訴訟を提起する前に)問題のあるクレームを治癒しておくべきであったと思料します。

 

 

Comment by Tatsuo YABE

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判決文の概要:

 

争点: 地裁判決、「CBTの特許USP6587550 のクレーム13の文言、detect analyzeは不明瞭(112条第2項違反)でありクレーム13は無効(CBT Flint v. Return Path: N.D.Ga. July 11, 2008: Summary Judgment Opinion)」は正しいか否かである。

 

CAFCで問題となった特許クレームはUSP6587550のクレーム13のみであって、以下のとおりである:

 

 

13. An apparatus for determining whether a sending party sending an electronic mail communication directed to an intended receiving party is an authorized sending party, the apparatus comprising: a computer in communication with a network,

 

the computer being programmed to detect analyze the electronic mail communication sent by the sending party to determine whether or not the sending party is an authorized sending party or an unauthorized sending party, and wherein authorized sending parties are parties for whom an agreement to pay an advertising fee in return for allowing an electronic mail communication sent by the sending party to be forwarded over the network to an electronic mail address associated with the intended receiving party has been made.

 

 

即ち、ISP(インターネットのサービスプロバイダー)が意図される受信者8にメイルを送信するメイル送信者1が当該メイルを送る権限を有するものか否かを判断する装置を規定しており、ネットワークと通信状態のコンピューターが送信者1が権限を持つ者か否かを判断するプログラムを備えていることを特徴としている。

 

上記のクレーム13の文言の detect analyzeという用語がクレームドラフトのエラーであることを地裁は認めたものの、当該エラーは裁判所で訂正できるレベルのエラーではないと判断した。 その理由は当該個所を訂正するには3つの対応の仕方があり、

 

(1)            detectを削除する;

(2)            analyzeを削除する;

(3)            detectanalyzeの間に andを挿入する。

 

上記の何れの対応をするべきか合理的な議論の余地があるとして地裁は、Novo Industries v. Micro Molds Corp(CAFC: 2003)判決に基づき、同地裁が訂正できるというレベルのエラーではないと判断し、112条第2項の下に当該クレーム13を不明瞭と判断し、クレーム13を無効とする判決に至った。

 

上記地裁判決はクレーム解釈に基づき、同解釈は法律問題(Markman v. Westview Instr.: Fed Cir. 1995)であり、CAFCde novoの基準(Cybor Corp. v. FAS Techs: Fed Cir. 1998)で審理する。CAFCCBTの主張、「当該文言のエラーは明白であり、訂正可能なものであり、クレーム解釈に合理的な議論を生じるものではない」を認めた。 クレームは他者を排除する発明を規定するが、当該クレームは明細書を参酌し、解釈されなければならない(Phillips v. AWH: Fed. Cir. 2005)。 もし裁判所においてクレームを訂正できないレベルであると判断されるときには、112条第2項の下に不明瞭と判断され、クレームは無効となる(Honeywell Int’l Inc. v. ITC: Fed Cir 2003)。 さらに、特許侵害裁判においてクレームに明白なエラーがある場合には当該クレームの文言を地方裁判所で訂正しても良いということは確立した法理論である(I.T.S. Rubber v. Essex Rubber: US Sup 1926)

 

Novo Indust.判決においてCAFCは以下のように判示した:

 

以下の要件を満たすときにのみ地裁は特許クレームの文言を訂正しても良い:

 

(1)         クレーム用語および明細書の記述に鑑みて、クレーム用語の訂正に関し合理的な議論の余地がない;

(2)         用語を訂正することが経過書類に鑑みて矛盾を生じない。

 

昨今の判決としてCAFCfluorine chlorineのシンボル(化学式)の間にコンマを挿入するという地裁のクレーム訂正を認めたという例がある(Ultimax Cement Manufacturing v. CTS Cement Manuf.: Fed. Cir. 2009)  当該訂正を認めた理由は当業者にとって明白なエラーであると判断されたからである。

 

今回の争点に戻り、上記3つの訂正の仕方のそれぞれを検討するに、いずれの訂正の仕方をしても、コンピューターが電子メイルを検出(‘detect’)することと分析(‘analyze’)することが要求されるので、クレーム13の権利範囲に影響がないということが理解される。 然るに、当業者がそのように detect and analyzeという意味でクレームを解釈することは明白である。 さらに、550特許の図2のステップ15とステップ16にそれぞれ、decode sending and receiving parties’ email addressescompare to list of authorized email addresses associated with receiving partyと開示しており、ステップ15ではサーバーは電子メイルを検出することが必須であり、ステップ16では分析の一つである比較検討を実施するということが開示されている。

 

 

 

さらに、550特許明細書のコラム4:814行に”… the computer decodes the datagram and then compares the source address with the authorized sender list”と述べられている。

 

このように、当該クレーム訂正をするにあたり、クレームに意図されていた意味合い及び当業者の理解に対して地裁が推測(Guess)する必要はない。

 

依って、地裁のクレーム13を無効とする判決を破棄する。

 

判決文(原文)

 

(1) US Patent Related 

(2) Case Laws 

(3) Self-Study Course

(4) NY Bar Prep

(5) LINKS

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