Thaler v. Vidal (Director of USPTO)

202285

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AI Cannot be an Inventor.

OPINION by Stark, joined by Moore (Chief Judge) and Taranto (Circuit Judge)

Summarized by Tatsuo YABE – 2022-08-17

本事案は2019年にThaler氏が開発したAIシステム(DABUS)によって生じたとされる発明に対し、AI(DABUS)を発明者として米国出願できるか否かが争点であって、PTOは否定し(AIは発明者にはなれない)、地裁の略式判決を経て今回CAFCでの判決となった。結論から言うとDABUS(AI)は発明者とはなりえない。米国特許における発明者は自然人でなければならない。

ご存じのようにThaler氏は米国に留まらず英国、オーストラリア、欧州、南アフリカにも同出願をしており、南アフリカにおいてはDABUSの発明が権利化されてる。米国出願をするにあたり必要となる発明者の宣言書でThaler氏、自らは発明の着想には貢献しておらず、DABUSが同着想に貢献したと述べ、故に、Thaler氏は発明者ではないと主張している。近年数多くの発明はAIとの共同(或いは補助)の上で生じているだろう。ここで発明の着想に対する貢献とは一体どういうことなのかを検討する必要があるのではなかろうか?

もし発明の着想に対する貢献が技術的な問題点を発見し、それに解決策を見出すということであれば数年の内に、否、現時点でも特定の技術分野における各種データを集積し、そこから改善されるべき事柄をAIが見つけること、さらに、その解決手段(解決の方向)を助言することも可能であろう。そうした発明を今後どのように保護していくべきか、やがては、法改正が必要になる時期がくるのではないだろうか?(以上筆者)

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■ 特許出願人:Stephen Thaler
■ 出願:US Patent Application Nos. 16/524,350 and 16/524,532 (以下出願)
■ 特許出願発明の概要:
当該出願はThaler氏が開発したAIシステム(DABUS: “Device for the Autonomous Bootstrapping of Unified Science”)によってなされた発明とThaler氏は主張している。

■ 背景:
Thaler氏はDABUSというAIシステムの開発者でありDABUSを使用することで生じた発明をDABUSのみを発明者として2019年に2件の米国出願をした。出願をするにあたり必要となる発明者の宣言書にはDABUSを代理しStatementを付記し、DABUSは想像力を持つ機械(Creativity Machine)でありThaler氏自身は発明の着想には一切貢献しておらず、DABUSが着想に貢献したので発明者であると主張(説明)し、且つ、DABUSの権利の全てをThaler氏が譲り受けたという体裁で米国出願をした。予想されたようにAI(DABUS)は自然人ではないので発明者にはなれないとしUSPTOは2件の出願は発明者の記載に不備があるという理由で受理しなかった。USPTOの判断を不服としバージニア州東部地区の連邦地裁に訴えを起こし、同地裁においてもDABUSを発明者として認めなかった(略式判決)。Thaler氏は同地裁判決を不服としてCAFCに控訴した。

■ PTOの判断:
出願には発明者に不備がある。発明者が記載されていないという理由でNotice of Missing Partsを出した。発明者は自然人であり機械は発明者にはならない。依って、出願書類は不完全である。

■ 地裁の判断:
略式判決において、米国特許法では発明者は自然人でなければならないと判示した。

■ CAFCの判断
地裁判決を支持する。

地裁の略式判決を第4区巡回裁判所の法理に基づき判断する。Supernus Pharma v. Iancu (Fed. Cir. 2019) PTOに対する反論なので行政判断に基づくレビュ基準に基づき判断する。即ち、PTOにおける判断が任意、気まぐれ、権限の濫用、或いは、法で定められた管轄、権限を越えていない場合にのみ地裁の略式判決を破棄する。さらに、本事案は法律問題なのでde novo基準(下級審判断に一切拘束されない)でレビュする。Facebook v. Windy City Innovations (Fed. Cir. 2004)

唯一の争点はAIソフトウエアのシステムが米国特許法における発明者になれるのかである。

[a] 米国特許法100条(f)項(発明者の定義):
米国特許法100条(f)項で規定されているように「発明者」は”individual”である。さらに米国特許法115条(発明者の宣言書)にあるように発明者は”individual”と表現されている。米国特許法においてこの”individual”という用語の規定はないが最高裁の判決において”individual”は名詞として使われるときには、通常、人間、即ち、人であると説示している。Mohamad v. Palestinian Auth., (US 2012)

[b] Oxford English Dictionary (2022):
当該辞書においても”individual”は一人の人間であると規定されている。

[c] 米国特許法115条(b)(2)「発明者の宣言書に関わる条文」
米国特許法115条(b)(2)において発明者の代名詞にhimself / herselfを使用しており、”itself”ではない。もし議会が人間以外も含むことを意図していればitselfとしていたであろう。

宣言書において”..such individual believes himself or herself to be the original inventor in the application”と記載されている。本法廷においてAIが”belief(信念、確信)”を持てるのかは判断しないが、DABASの代わりにそれ(belief)があるとして記載できるという証拠は存在しない。

[d] 米国特許法101条(特許適格性を規定)と271条(侵害行為を規定する条文):
101条には”whoever (誰でも) invents or discovers…”とあるが同条文においても米国特許法で規定された条件と要件を満たさなければならないと規定されており、この条件の一つとして100条で規定する「発明者」の定義を満たさなければならない。

さらに、271条においても”whoever”という用語が用いられているが、この条文においては法人などの自然人以外を含む。しかしこれは会社(法人)が特許を侵害する場合もあるという趣旨であって、この条文によって自然人以外が米国特許の発明者になると解釈はされない。従って、本法廷における争点は”whoever”という用語の意味合いではなく特許法で「発明者」の意味として使われる”individual”という用語の意味合いである。事実、議会において”whoever”という用語は”individual”よりも遥かに広い意味合いで使用している。1. U.S.C. 1

[e] 米国特許法103条(非自明性に関する条文)
米国特許法103条において、発明がどのように生じたかに拘わらず・・(“Patentability shall not be negated by the manner in which the invention was made”)という文言があるが、103条は発明者の性質を規定しているわけではない。103条においては、天才の閃きが一切なく、決まった手順で実験をしている最中の発見であっても非自明性を満たす場合もあるという意味合いで規定されている。

[f] CAFCの先例における「発明者」の解釈:
昨今のCAFCの先例(Univ. of Utah v. Max-Planck-Gesellschaft”: Fed. Cir. 2013:Beech Aircraft v. EDO Corp: Fed. Cir. 1993)においても「発明者」は自然人でなければならないと判示している。本先例において争点は違うが、法人或いは国(主権者)は発明者にはなれないと判示している。これら2件のCAFCの判決において「発明者」の通常の意味は自然人に限定されることを確認している。

[g] 条文全体において一貫性のある解釈:
法律の条文は時として複数の妥当な意味合いで解釈されることがある。しかし本事案においては条文(米国特許法)の最初から最後まで一貫して当該文言に通常の意味合いで解釈される。Bostock v. Clayton Cnty (S.Ct. 2020) 米国特許法において”individual”と”inventor”という用語は疑いの余地なく自然人である。

結論:
本事案の争点に対しては特許法の条文が明白且つ直接回答しているので条文の文言解釈を超えて判断する必要はない。即ち、議会は自然人のみが米国特許法における発明者であると規定したのである。依って地裁判決を支持する。

 

References:

35U.S.C. 100(f):

(f) The term “inventor” means the individual or, if a joint invention, the individuals collectively who invented or discovered the subject matter of the invention.

35 U.S.C.101 – Inventions Patentable
Whoever invents or discovers any new and useful process, machine, manufacture, or composition of matter, or any new and useful improvement thereof, may obtain a patent therefor, subject to the conditions and requirements of this title.

35 U.S.C. 103 – Conditions for Patentability; Non-Obvious Subject Matter
A patent for a claimed invention may not be obtained, notwithstanding that the claimed invention is not identically disclosed as set forth in section 102, if the differences between the claimed invention and the prior art are such that the claimed invention as a whole would have been obvious before the effective filing date of the claimed invention to a person having ordinary skill in the art to which the claimed invention pertains. Patentability shall not be negated by the manner in which the invention was made.

35 U.S.C.115: - Inventor’s oath or declaration

(a)Naming the Inventor; Inventor’s Oath or Declaration. 

An application for patent that is filed under section 111(a) or commences the national stage under section 371 shall include, or be amended to include, the name of the inventor for any invention claimed in the application. Except as otherwise provided in this section, each individual who is the inventor or a joint inventor of a claimed invention in an application for patent shall execute an oath or declaration in connection with the application.

(b)Required Statements.  An oath or declaration under subsection (a) shall contain statements that—

(1) the application was made or was authorized to be made by the affiant or declarant; and

(2) such individual believes himself or herself to be the original inventor or an original joint inventor of a claimed invention in the application.

35 U.S.C.271 – Infringement of Patent
(a) Except as otherwise provided in this title, whoever without authority makes, uses, offers to sell, or sells any patented invention, within the United States or imports into the United States any patented invention during the term of the patent therefor, infringes the patent.

(b) Whoever actively induces infringement of a patent shall be liable as an infringer.

(c) Whoever offers to sell or sells within the United States or imports into the United States a component of a patented machine, manufacture, combination or composition, or a material or apparatus for use in practicing a patented process, constituting a material part of the invention, knowing the same to be especially made or especially adapted for use in an infringement of such patent, and not a staple article or commodity of commerce suitable for substantial noninfringing use, shall be liable as a contributory infringer.

(d) – (i) omitted.

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(1) US Patent Related 

(2) Case Laws 

(3) Self-Study Course

(4) NY Bar Prep

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