271条(侵害)関連CAFC・最高裁判決


 WesternGeco LLC v Geophysical Corp (Supreme Court: June 22, 2018)   
271(f)(2)に基づく侵害行為に起因する外国での遺失利益:
米国特許法第271(f)(2)に基づく侵害行為に起因する外国での遺失利益(Lost foreign Profits)を284条で規定する損害賠償額の基礎となるかに関して最高裁の判決が出た。7:2の多数意見で諸外国におけるLost Profits284条の損害賠償の基礎となると判示した。

 Life Technologies v. Promega Corp. (Supreme Court: February 22, 2017) 
271(f)(1)項の侵害(構成要素の一部を外国に輸出する行為):
クレームの単一の構成要素を米国で製造し、外国に輸出する行為 (外国において組合されてクレームの構成要素を全て満たす)は271(f)(1)の基に侵害となるか? 最高裁は271(f)(1)項の”…all or a substantial portion of the components of a patented invention…”というフレーズのa substantial portionという用語は質的(qualitatively)な実質性ではなく量的(quantitatively)な実質性を意図しており、複数であって、単一の構成要素ではないと判示した。然るに、被疑侵害者Life Technologiesの行為(単一の構成要素を英国に輸出し英国でクレームのごとく組み合わされる)は271(f)(1)項の基に侵害行為を構成しないと判断した。然し、271(f)(2)271(f)(1)を補完する条文である。271(f)(2)で規定されているように、「・・・汎用品ではなく、且つ、特許発明を意図して作られており、実質的に特許非侵害の使用にそぐわない如何なる部品(any component of a patented invention)を米国に輸入或いは米国から輸出する行為は・・・」とあり、any component of a patented inventionであり、単一(単数)の構成要素の場合を含むと明瞭に規定されている。

Akamai v. Limelight (Fed. Cir. en banc: 2015-08-13) 
直接侵害(271a項)方法クレーム:
方法クレームの直接侵害(271a項)の成立要件である「single party ルール」の解釈の仕方に関して大法廷が判示した。複数の当事者で方法クレームのステップを実行する場合に直接侵害の有無を判断するには、裁判所は一方の当事者の行為が他の当事者に帰属し、全体として単一の当事者が侵害行為に責任を負うか否かを検討する。次のような場合に当事者が他者によるステップを実施する行為に対しても責任を負う(1)当該当事者が他者の行為を指揮(指示)・監督している場合、(2)複数の行為者(例:当事者と他者)が共同事業体を構成する場合。

Commil v. Cisco - (Supreme Court: May 26, 2015)
271(b)項の教唆侵害(特許無効を善意で信じている場合):
最高裁は62の多数意見で、「被疑教唆者が問題となる特許が無効であると善意で信じていた(alleged inducers belief in invalidity)」という挙証は教唆侵害(271(b))の責任を免れないと判示した。最高裁は本題に入る前にCommil社と政府(Solicitor General)の教唆侵害に対する理解を正した。即ち、教唆侵害を構成するには問題となる特許の存在を周知していることのみならず被疑教唆者の行為によって他者が当該特許を侵害することを周知しているという2つの周知要件を挙証することが必要である(2011Global-Tech最高裁判決)

Akamai v. Limelight (Fed. Cir. 2015-05-13) 
271(b)項の教唆侵害(271(a)項の直接侵害との関係):
最高裁からの差戻審(2:1判決)。CAFC多数意見は自身のMuniauction事件(2008年)の判示を肯定した。即ち、271条(a)項の直接侵害を構成するためには「単一のEntity: single entity」によってクレームしている全てのステップが実行されなければならない。ここで言う「単一のEntity」とは単一の人(法人)、或いは、本人と代理人との関係、契約関係、或いは、共同事業を営む上で互いに代理人となる関係を含む。

 COMMIL v. CISCO: Supreme Court granted Certiorari- 2014-12-05
271(b)項の教唆侵害
合衆国最高裁、271(b)項、教唆侵害の構成要件(Intent)に関して審理することを決定。

 Limelight v. Akamai - (Supreme Court: June 2, 2014)
271(b)項の教唆侵害(271(a)項の直接侵害との関係):
271(a)項による直接侵害が成立しない場合には被告Limelight271条(b)項の教唆侵害の責任を負うことはないと判示した。 CAFC271(a)項の直接侵害の成立要件(方法クレームのステップを複数人で満たす場合の要件)を再度審理するよう差戻した。

 Akamai v. Limelight v. Epic   (Fed. Cir. en banc2012-08-31)
方法クレームに対する間接(誘因)侵害:
大法廷(6:5)の僅差で、2つの事件(Akamai事件とMcKesson事件)に共通する方法クレームの誘因侵害(米国特許法第271b項)に対し重要な判決をくだした。 多数意見(65)によると、方法クレームに対する誘因侵害を成立するには、誘因者(教唆者)が問題となる方法クレーム(特許)を周知しており、方法クレームの全てのステップが満たされている(侵害がある)ことが大前提である。しかし、方法クレームの全てのステップを満たす(実施する)のに、教唆者がステップの一部を実施し、残りのステップを被教唆者によって実施されても良い(Akamai事件)。 さらに、教唆者が方法クレームのステップの何れも実施せずに、複数の実行者(被教唆者)によってステップが分割的に実施され、全体としてステップの全てが実施されている場合であっても良い(McKesson事件)と判示した。 

 Global-Tech Appliances v. SEB. S.A. (Supreme Court: May 31, 2011)
271(b)項の間接(誘因)侵害:
271条(b)項の「侵害の誘因(inducement)」を成立する要件が争点となった。
米国特許法第271(b)項:Whoever actively induces infringement of patent shall be liable as an infringer;
271条(b)項の誘因侵害を成立するには被告が侵害行為を周知していることが要件である。或いは、故意の盲目(Willful Blindness)は「侵害行為を周知している」という要件の代わりとなる。合衆国最高裁(8:1)はCAFCの判断基準(Deliberate Indifference:故意の無関心)を否定するも、最高裁は「意図的に盲目(willful blindness):刑事法で採用されるより悪質性が高い」という基準に鑑みCAFCの誘因侵害の判断は正しかったであろうという理由でCAFC判決を支持した。 尚、この基準(willful blindness)を満たすには2つの要件が必要であるとした;(1) 被告がその事実(特許侵害)が高い確率で起こるという危険性を周知している;(2)被告はその事実(侵害)を知ることを意図的に避ける行動をした。